**下の子が生まれてから、上の子にばかり厳しくあたってしまう…。**そんな自分に罪悪感を感じていませんか?実は、多くの保護者が経験する「きょうだい差別」は、決して珍しいことではありません。この記事では、きょうだい差別が起こる心理的メカニズムから具体的な対処法まで、専門家の知見を交えて詳しく解説します。
きょうだい差別とは?よくある状況をチェック
きょうだい差別の定義
きょうだい差別とは、同じ家庭で育つ兄弟姉妹に対して、親が無意識に異なる扱いをしてしまうことを指します。「上の子の時にはうまくいったのに、下の子ではうまくいかずに叱ってばかり……」「下の子だとかわいいけれど、上の子が甘えてくるとイライラする……」といった状況は、多くの家庭で見られる現象です。
こんな状況に心当たりはありませんか?
以下のチェックリストで、現在の状況を確認してみましょう。
親の行動チェックリスト
- ☐ 上の子だけに「お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから」と言ってしまう
- ☐ 下の子の前で上の子を叱ることが多い
- ☐ 上の子の甘える行動にイライラしてしまう
- ☐ 同じことをしても、上の子だけを注意してしまう
- ☐ 上の子には完璧を求め、下の子には寛容になる
- ☐ 上の子の話を聞く時間が少ない
上の子の様子チェックリスト
- ☐ 下の子に意地悪をするようになった
- ☐ 「○○ちゃんなんかいらない」と言うことがある
- ☐ 赤ちゃん返りのような行動が見られる
- ☐ 以前より甘えた言葉遣いをするようになった
- ☐ 親の注意を引こうと問題行動を起こす
- ☐ 表情が乏しくなった、または元気がない
複数該当する場合は、きょうだい差別が起きている可能性があります。
なぜきょうだい差別は起こるのか?親の心理を解き明かす
1. 発達段階の違いによる一過性の格差
発達段階の違いによるきょうだい格差は、たとえば上の子が5歳、下の子が2歳の場合、2歳の下の子がイヤイヤ期で手に負えない状態で、それに比べると上の5歳の子は話がわかるので、上の子が好き、といった場合などがあります。
この種の差別は時期的なもので、数年後に立場が逆転することもよくあります。
2. 生来の気質の違い
子どもは生まれ持った気質が異なります。
育てやすい子の特徴 | 育てにくい子の特徴 |
---|---|
規則正しい生活リズム | 不規則な生活パターン |
感情の起伏が穏やか | 激しく感情を表現する |
新しい環境に適応しやすい | 環境の変化を嫌がる |
親の指示に従いやすい | 自己主張が強い |
保護者のかたが子どもの気質に気付き、それを許容していくことで、きょうだいそれぞれの「その子らしさ」を引き出し、伸び伸びと子どもが育つようです。
3. 母親の身体的・精神的負担
下の子が生まれると、母親の負担は格段に増えます。下の子が赤ちゃんであったり、きょうだいの年の差が小さかったりするほど、子育てに対しての心理的負担が大きいことが研究で示されています。
この負担により、つい上の子に対して期待値が高くなり、厳しくあたってしまうのです。
4. 「小さいものを守る」本能
人間には「小さく弱いものを守りたい」という本能があります。小さいものが可愛いと思う人間の本能が働くからです。さらに、身体機能が未熟な赤ちゃんを守ってあげないといけないという母性本能が働くのも一因です。
「上の子可愛くない症候群」とは?
定義と症状
上の子可愛くない症候群は、きょうだいの子育てをしている保護者が下の子に比べて上の子を可愛く思えない様子を指します。重要なのは、これは医学的な病気ではないということです。
なりやすい人の特徴
真面目で何でもきっちりこなすタイプのママに多く見られます。上の子に自分のペースを乱されるため、ストレスを感じてしまうのでしょう。また、完璧主義の人ほどなりやすい傾向があります。
体験談:先輩ママの声
「二人目は低出生体重児で、生まれつきの持病がありました。退院後しばらくはNICUに母乳を届ける日々で、精神的にも体力的にも疲労困憊。ある日、病院から帰ってくると、4歳の長女が背中に飛びついてきました。それを、私は反射的にふり払ってしまったんです。長女は驚いたのと悲しいのとで、大泣き。私も自分自身の行動に驚いて、大泣き。以来、長女が甘えてくるたびにふり払いたくなるのをガマンする自分が心底冷たい人間に思えて、自己嫌悪しました」(小学1年生と小学5年生の女の子のママ)
きょうだい差別が子どもに与える深刻な影響
上の子への心理的影響
きょうだい差別は、子どもの心に深い傷を残します。
短期的な影響
- 自己肯定感の低下
- 赤ちゃん返り
- 攻撃的な行動
- 内向的になる
長期的な影響 大人になってもその心の傷は癒えることなく、日常生活や対人関係に影響を及ぼします。幼少期に親から不平等な扱いを受けたことにより、自己肯定感が低く、自分の価値を疑い続ける人もいます。
上の子の不満と心の叫び
上の子は「お姉ちゃんでしょ」「お兄ちゃんらしくして」と我慢を強いられることも少なくありません。これにより、上の子は以下のような不満を抱えます:
- 「なぜ自分だけ我慢しなければならないのか」
- 「親は下の子の方を愛している」
- 「自分は必要ない存在なのか」
下の子への影響も見逃せない
差別は上の子だけでなく、下の子にも影響を与えます:
- 兄弟姉妹からの愛情を受けにくくなる
- 過保護により自立心が育ちにくい
- 罪悪感を抱えながら成長する
今すぐ始められる!きょうだい差別の対処法
1. まずは親自身のケアから
まず1つ目は自分のメンテナンスです。睡眠不足、体の疲れ、完璧主義思考…など、そのままになっているところも多いのではないでしょうか。
自分ケアの具体的方法
- 十分な睡眠を確保する
- 栄養バランスの取れた食事を心がける
- 短時間でもリフレッシュの時間を作る
- 家事を完璧にこなそうとしない
- 周りの助けを積極的に求める
2. 上の子の成長を認める声かけ
上の子が「自分自身が成長している」ことを自覚できる機会を作ることです。子ども自身が「自分は成長している。それをママパパもわかってくれている」と理解できる状況、愛されて認められていると感じられる状況ができれば、下の子に意地悪する必要がなくなるわけです。
効果的な声かけ例
場面 | NGな声かけ | OKな声かけ |
---|---|---|
着替えの時 | 「早くしなさい」 | 「お着替え上手になったね!」 |
下の子の世話の時 | 「お兄ちゃんなんだから」 | 「ママを助けてくれる?」 |
成長を感じた時 | 何も言わない | 「おてて大きくなってるね!」 |
3. 平等ではなく公平な対応を心がける
平等と公平は異なります。
- 平等:すべて同じ扱いをすること
- 公平:それぞれの年齢や発達段階に応じた適切な対応をすること
年齢や発達段階が違う子どもたちには、公平な対応が重要です。
4. 上の子だけの特別な時間を作る
下の子をおじいちゃんおばあちゃんに預けて、上の子とお出かけする時間を作ったのもよかったと言っていました。
上の子との時間作りのアイデア
- 下の子が昼寝中に二人だけで過ごす
- 早起きして朝の時間を上の子と共有する
- 月1回でも上の子だけとの外出時間を設ける
- 寝る前の読み聞かせを上の子優先にする
5. きょうだい喧嘩への適切な対応
兄弟喧嘩の仲裁で一番良くないのは、喧嘩の流れもわかっていないのに、頭ごなしに、上の子どもを叱ること。「お姉ちゃんなんだから、我慢しなさい」「お兄ちゃんなのに、どうしてそんなこと言うの?」などと叱るのはNGです。
適切な仲裁方法
- まず状況を把握する
- 両方の子どもの話を聞く
- 平等に対応する
- 必要に応じて両方を叱る
- 最後に愛情を伝える
専門家が教える!具体的な改善ステップ
ステップ1:現状認識(1週間)
まずは1週間、自分の行動を客観的に観察してみましょう。
記録すべき項目
- 上の子に対してイライラした場面
- きつい言葉をかけてしまった時
- 差別的な扱いをしてしまった瞬間
- 上の子の反応や表情の変化
ステップ2:小さな変化から始める(2-3週間)
「このくらいならできるかも」と思える行動から試してみましょう。
今週から始められること
- 朝起きた時、上の子に最初に声をかける
- 上の子の良いところを1日1つ口に出して褒める
- 叱る前に一呼吸置く
- 上の子にハグやスキンシップを意識的に増やす
ステップ3:習慣化と継続(1ヶ月以降)
小さな変化が定着してきたら、より積極的な取り組みを始めましょう。
長期的な取り組み
- 週1回の上の子との特別時間
- 家族会議での上の子の意見尊重
- 上の子の成長記録をつける
- 定期的な親子の振り返り時間
悩んだ時の相談先とサポート体制
公的な相談窓口
相談窓口 | 電話番号 | 対応内容 |
---|---|---|
児童相談所相談専用ダイヤル | 189(いちはやく) | 子育ての悩み全般 |
子ども家庭支援センター | 各自治体による | 育児相談、家庭支援 |
法務省子どもの人権110番 | 0120-007-110 | いじめや虐待の相談 |
専門家による支援
- スクールカウンセラー:学校を通じて相談可能
- 臨床心理士:個別カウンセリング
- 小児科医:子どもの発達相談
- 保育士・幼稚園教諭:日常的な育児アドバイス
オンライン相談サービス
最近では、LINEやチャットを使った相談サービスも充実しています。24時間対応のものもあり、気軽に相談できる環境が整っています。
実際に改善した家族の体験談
Aさん家族の場合(3歳差の姉妹)
状況:長女(5歳)が次女(2歳)にきつくあたる。母親も長女にイライラしがち。
取り組み:
- 長女との朝の時間を確保(15分間の読み聞かせ)
- 次女の昼寝中は長女との特別タイム
- 「お姉ちゃんなんだから」は禁句に
- 長女の頑張りを具体的に褒める
結果:2ヶ月後、長女の次女への当たりが和らぎ、母親のイライラも大幅に減少。家族の雰囲気が明るくなった。
Bさん家族の場合(2歳差の兄弟)
状況:長男(4歳)の赤ちゃん返りがひどく、母親が「上の子可愛くない症候群」に。
取り組み:
- パートナーに状況を説明し、長男の担当を交代制に
- 母親のリフレッシュ時間を週2回確保
- 長男の小さな成長を日記に記録
- 月1回の長男との外出デート
結果:3ヶ月後、長男の赤ちゃん返りが改善し、母親も長男を愛おしく感じられるように。
編集部からのメッセージ
私たち編集部のスタッフも、多くが子育て経験者です。きょうだい差別で悩んだ経験を持つメンバーから、以下のメッセージをお伝えします。
「完璧な親なんて存在しません。私も上の子に対して冷たくあたってしまった時期がありました。でも、そんな自分を責め続けるより、今からでも変われることに目を向けることが大切だと気づきました。小さな変化でも、子どもはちゃんと感じ取ってくれます。一人で抱え込まずに、周りの力を借りながら、親子で成長していけばいいのです。」(編集部・田中、2児の母)
まとめ:きょうだい差別は克服できる
きょうだい差別は決して珍しいことではありません。多くの親が経験する自然な現象であり、適切な対処をすれば必ず改善できます。
重要なポイント
- 自分を責めすぎない:まずは親自身のケアから始める
- 小さな変化から:完璧を目指さず、できることから始める
- 子どもの個性を理解:平等ではなく公平な対応を心がける
- 継続的な取り組み:短期間で諦めず、長期的な視点で改善する
- 周りの力を借りる:一人で抱え込まず、適切な支援を求める
「上の子可愛くない症候群」は一過性のものなので、必要以上に罪悪感に苛まれないでくださいね。
今日から始められる小さな変化が、やがて家族全体の幸せにつながります。あなたの家族らしい、温かい関係を築いていってください。
困った時は一人で悩まず、専門機関に相談することをお勧めします。また、当メディアでは他にも子育てに関する様々な情報を発信していますので、ぜひ他の記事もご覧ください。
この記事が少しでもあなたの子育ての助けになれば幸いです。