はじめに
「うちの子、もう2歳なのにまだあまり話さない…」 「周りの子はペラペラおしゃべりしているのに、うちの子は大丈夫?」
そんな不安を抱えているママ・パパは決して少なくありません。厚生労働省が行った調査によると、未就学児の親の約8割の方が、育児の悩みや不安があると答えています。言葉の発達は特に気になるポイントの一つですよね。
この記事では、2歳頃の言葉の発達について、家庭でできる具体的な支援方法から相談先まで、幼児教育を考えるご夫婦に向けて詳しく解説します。
この記事でわかること
- 2歳児の言葉の発達の目安
- 言葉が遅れる主な原因
- 家庭でできる具体的な言語発達支援方法
- 相談が必要な場合の判断基準と相談先
2歳児の言葉の発達|一般的な目安を知ろう
年齢別の言語発達の流れ
まずは、一般的な言語発達の流れを確認しましょう。ただし、乳幼児期の子どものことばの発達は個人差がとても大きく、また環境や、引っ込み思案かどうかといったそのお子さんの性格も関わってくるため、上記の目安に当てはまらないからと言って、すぐ「ことばが遅れている」とは断言できません。
年齢 | 発達の目安 | 具体例 |
---|---|---|
0歳 | 喃語(なんご) | 「あーあー」「うーうー」 |
1歳 | 意味のある単語 | 「ママ」「ワンワン」「ブーブー」 |
1歳6か月 | 意味のある言葉5つ以上 | 「おちゃ」「バイバイ」など |
2歳 | 二語文の出現 | 「ママ だっこ」「これ ちょうだい」 |
2歳半 | 語彙数の増加 | 「大きい」「小さい」などの概念語 |
3歳 | 三語文・会話 | 「ママ、おみず ちょうだい」 |
2歳で確認したいポイント
2歳では通常「ワンワンいた」などの2語文を話すことができます。具体的には以下のような発達が見られます。
言葉の理解面
- 簡単な指示が理解できる(「コップとって」など)
- 絵本を見ながら物の名前を聞くと指差しできる
- 「大きい」「小さい」などの概念を理解し始める
言葉の表現面
- 二語文が出現する(「パパ いない」「アンパン きた」など)
- 質問が増える(「これなに?」)
- 好きな歌を口ずさむ
コミュニケーション面
- 指差しで要求を伝える
- 身振り手振りを使って表現する
- 大人とのやり取りを楽しむ
言葉が遅れる主な原因とは?
1. 個人差・性格による要因
同じ2歳児でも、性格や発達のスピードは人によって大きく異なります。一般的に、大人しい子や内向的な子、おっとりしている子は、おしゃべりの頻度が少ないため、言葉の発達に遅れがあると見られるケースが多々あります。
この場合は「話せない」のではなく「話さない」だけの可能性が高く、言葉そのものが出ている場合はあまり心配する必要はありません。
2. 聴力の問題
前述の通り、子どもは耳で聞いて言葉を理解するので、肝心の聴覚に問題があると、言葉の発達が遅れる原因となります。
聴力チェックのポイント
- 背後から名前を呼んだ時の反応
- 大きな音への反応
- テレビの音量を必要以上に大きくしていないか
- 聞き返しが多くないか
気になる場合は、まずかかりつけの小児科に相談するか、耳鼻科を受診しましょう。
3. コミュニケーション経験の不足
2歳児はまだ文字を読むことができないので、耳で聞いた音と、目に見えているものを結びつけて言葉を理解します。しかし、子どもが何かに興味・関心を持っていたとしても、それに反応したり、説明したりしてくれる人がまわりにいないと、いつまで経っても言葉を習得することができません。
日常的な大人との関わりが言語発達の基盤となります。
4. 発達障害などの要因
難聴、精神遅滞、自閉症などの原因がなく、運動発達や非言語性コミュニケーションが良好であるにもかかわらず、言語発達のみが遅れるものを発達性言語障害と呼びます。
発達性言語障害の種類
- 表出性言語障害:言語理解は良好だが発語が遅れるタイプ(就学前に約90%が正常範囲に追いつく)
- 受容性言語障害:言語理解と発語ともに遅れるタイプ(専門的な支援が必要な場合が多い)
家庭でできる言語発達支援の具体的方法
1. 語りかけ育児の実践
語りかけ育児とは、イギリスの言語治療士であるサリー・ウォードにより提唱された育児法です。語りかけ育児を1日30分行ったところ、目を見張るような進歩を示し、ことばの遅れが躍動的に改善されたそうです。
語りかけ育児の基本ルール
- 1日30分、1対1の時間を作る
- テレビを消し、静かな環境で
- 子どもの興味に合わせて語りかける
- 無理に言葉を引き出そうとしない
実践例
- 子どもがクマのぬいぐるみに手を伸ばしたら「それはクマちゃんね」
- ぬいぐるみを落としたら「落っこちたね」
- 散歩中にバスを見つけたら「大きなバスが通ったね」
2. 読み聞かせの工夫
効果的な読み聞かせのコツ
- 子どもが興味を示すページでゆっくり止まる
- 「これは何かな?」と質問形式で進める
- 繰り返し同じ本を読む(子どもは繰り返しを好みます)
- 感情豊かに読む
3. 日常生活での言葉がけ
場面別の語りかけ例
場面 | 語りかけ例 |
---|---|
食事時 | 「おいしいね」「あつあつだね」「もぐもぐしてるね」 |
お風呂 | 「あったかいね」「泡がぶくぶくだね」「きれいになったね」 |
お着替え | 「腕を通すよ」「ボタンをぽちぽち」「かっこよくなったね」 |
外出時 | 「風が気持ちいいね」「お花がきれいだね」「車がブーブー」 |
4. 遊びを通した発語促進
口の運動を促す遊び
- シャボン玉遊び(息を吹く練習)
- ストロー遊び(紙を吹いて動かす)
- 歌遊び(口の動きを真似する)
- 風車やラッパなどの楽器遊び
言葉遊びの例
- 「いないいないばあ」(予測とサプライズ)
- 手遊び歌(リズムと言葉の組み合わせ)
- 動物の鳴き真似(「ワンワン」「ニャーニャー」)
- 擬音語遊び(「ゴロゴロ」「パチパチ」)
5. 環境設定のポイント
言語発達を促す環境作り
- テレビやスマートフォンの使用時間を制限する
- 家族での会話時間を大切にする
- 子どもの目線に合わせて話しかける
- せかさず、子どものペースに合わせる
注意すべきポイント
- 間違いを直ちに訂正しない
- 子どもが話している間は最後まで聞く
- 無理に発語を強要しない
こんな時は専門家に相談を
相談が必要な場合のチェックリスト
以下のような場合は、専門家への相談を検討しましょう。
2歳時点でのチェックポイント
- [ ] 意味のある単語がほとんど出ない
- [ ] 指差しがない
- [ ] 名前を呼んでも振り向かない
- [ ] 簡単な指示(「おいで」など)が理解できない
- [ ] 目が合わない・合いにくい
- [ ] 大人の手を引いて要求を伝える(クレーン現象)
3歳時点での目安 3歳になると自分の名前、年齢が言えるようになり、3語文(「パパ会社に行った」など)が言えるようになります。少なくとも2語文を話すことができなければ詳しい検査が必要になります。
相談先一覧
相談先 | 特徴 | 連絡方法 |
---|---|---|
市町村の子育て相談窓口 | 身近で相談しやすい | 自治体ホームページで確認 |
保健センター | 保健師による専門的なアドバイス | 電話または面談 |
児童相談所 | 24時間対応 | 全国共通ダイヤル「189」 |
かかりつけ小児科 | 医学的な観点からの判断 | 直接受診 |
言語聴覚士 | 言語発達の専門家 | 病院や療育センター |
相談時に準備するもの
- 母子手帳
- 普段の様子を記録したメモ
- 気になる行動の具体例
- これまでの発達の経緯
編集部体験談|我が家の言葉の遅れ体験記
編集部Aの体験
我が家の次男は2歳3か月になっても単語がほとんど出ず、心配になって保健センターに相談しました。保健師さんから「お兄ちゃんが代弁してくれるから、話す必要性を感じていないのかも」とアドバイスをもらい、次男と1対1の時間を意識的に作るようにしました。
具体的には、お兄ちゃんが幼稚園に行っている間に次男と公園で過ごし、「ブランコ乗る?」「すべり台行く?」と選択肢を提示しながら語りかけを続けました。3か月後、突然「ママ、だっこ」と二語文が出た時は感動しました。
編集部Bの体験
娘は2歳半になっても喃語が中心で、周りの子と比べて明らかに言葉が遅く感じていました。小児科医に相談したところ、聴力検査を勧められ、軽度の難聴が判明。補聴器を使用し始めてから、みるみる言葉が増えていきました。
「何かおかしい」という親の直感は大切だと痛感しました。早めに相談してよかったです。
まとめ|子どものペースを大切に、適切なサポートを
言葉の発達には大きな個人差があります。2歳ではあまりしゃべらなかった子が、周りの関わり方によって、3歳になったら急にしゃべり始めたという例もあります。子どものペースに合わせて、焦らずに見守って行くことも大切です。
大切なポイント
- 個人差を理解する:発達には必ず個人差があること
- 日常的な語りかけ:特別なことではなく、日常の中で自然に
- 子どもの興味に寄り添う:強制ではなく、楽しい体験として
- 適切なタイミングでの相談:気になることがあれば早めに専門家へ
言葉は子どもとのコミュニケーションの重要な手段ですが、それだけが全てではありません。表情、身振り手振り、スキンシップなど、さまざまな方法で子どもとの絆を深めながら、その子らしい成長を温かく見守っていきましょう。
【参考資料】
- 厚生労働省「保育所保育指針解説書」
- 日本小児科学会「乳幼児健康診査の手引き」
- 子ども家庭庁「子ども家庭総合評価表」
- 国立成育医療研究センター「改訂版乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」
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お子さんの言葉の発達について心配なことがあれば、一人で悩まずに専門家に相談することをお勧めします。適切なサポートを受けることで、親子ともに安心して子育てを楽しむことができるでしょう。