下の子にかかりきりで、上の子が荒れる——兄弟ケアの知育対応で家族のバランスを取り戻そう

二人目の育児がスタートすると、多くの家庭で直面するのが「上の子の赤ちゃん返り」です。これまで愛情を一身に受けていた上の子が、急に甘えたり、わがままになったり、時には攻撃的になったりする姿に、戸惑いや不安を感じている方は多いのではないでしょうか。

編集部でも、二人目出産後に「上の子が急に不安定になって、どう対応すればいいか分からない」という相談を数多く受けています。実際に、「たまひよ」アプリユーザーの調査では、二人目出産時に上の子の赤ちゃん返りが「あった」と回答した方が約38%にのぼり、多くの家庭が同じ悩みを抱えていることが分かります。

本記事では、上の子の心理状態を理解し、兄弟バランスを保ちながら知育的なアプローチで乗り切る具体的な方法をお伝えします。

  1. なぜ上の子は「荒れる」のか?赤ちゃん返りの心理を理解しよう
    1. 赤ちゃん返りとは何か
    2. 上の子の気持ちを理解する
    3. 赤ちゃん返りが起こりやすい時期と期間
  2. よくある赤ちゃん返りの行動パターンと対応法
    1. パターン1:抱っこ・甘え行動の急増
    2. パターン2:攻撃的行動・反抗的態度
    3. パターン3:退行行動(できていたことができなくなる)
  3. 兄弟バランスを保つ知育対応のコツ
    1. 時間管理のバランス戦略
    2. 役割分担で自尊心を育てる
  4. 知育要素を取り入れた兄弟ケア活動
    1. 一緒に楽しめる知育遊び
    2. 感情コントロールを育てる活動
  5. 家族全体のサポート体制の構築
    1. パパの役割と連携
    2. 園や学校との連携
  6. NG対応と推奨対応の比較
    1. やってはいけない対応
    2. 推奨される対応
  7. 月齢・年齢別の具体的対応策
    1. 2-3歳の対応法
    2. 4-5歳の対応法
    3. 6歳以上の対応法
  8. 専門家の視点:発達心理学から見た兄弟関係
    1. 赤ちゃん返りの意味
    2. 長期的な視点での兄弟関係
  9. ママの心の健康も大切に
    1. 完璧を求めすぎない
    2. サポートネットワークの活用
  10. 成功事例:実際の家庭での取り組み
    1. 事例1:3歳と0歳の兄弟(Aさん家庭)
    2. 事例2:5歳と0歳の姉妹(Bさん家庭)
  11. 困った時のチェックリスト
    1. 緊急度判断の基準
    2. 日常的な対応チェック
  12. よくある質問(Q&A)
    1. Q1: 赤ちゃん返りはいつまで続きますか?
    2. Q2: 上の子が赤ちゃんを叩こうとします。どうすれば?
    3. Q3: 働いていて時間が取れません
  13. まとめ:愛情のバランスで家族みんなが幸せに

なぜ上の子は「荒れる」のか?赤ちゃん返りの心理を理解しよう

赤ちゃん返りとは何か

赤ちゃん返りとは、下のお子さんの誕生をきっかけに、上のお子さんが今までできていたことができなくなったり、赤ちゃんのように振る舞ったりする状態を指します。心理学では「退行」と呼ばれ、ストレスに対する自然な反応の一つです。

上の子の気持ちを理解する

赤ちゃんが生まれたら、上の子どもはママやパパの全ての愛情や関心が、生まれたばかりの赤ちゃんにいってしまった、と嫉妬心を感じてしまいます。

編集部の取材でも、3歳の息子を持つママから「息子が私に『赤ちゃんなんていらない』と言った時、胸が痛くなりました。でも、その気持ちも理解できるんです」という声をいただいています。

上の子が感じている主な感情

感情具体的な現れ背景にある思い
不安夜泣き、抱っこをせがむ「ママがいなくなってしまうのでは」
嫉妬赤ちゃんに意地悪をする「赤ちゃんばかり可愛がられている」
寂しさ一人遊びを嫌がる「もっと構ってほしい」
混乱できていたことができなくなる「どうしたらいいか分からない」

赤ちゃん返りが起こりやすい時期と期間

赤ちゃん返りが多い年齢は2歳~3歳くらいで、4歳頃にはおさまることが多いとされています。ただし、赤ちゃん返りをする期間は、下のお子さんが生まれてから数か月という場合が多いです。お子さんによっては、妊娠中から赤ちゃん返りがあったり、1年以上続くこともあります。

編集部の調査では、年齢が上がるにつれて表現方法は変わりますが、小学生でも赤ちゃん返りのような行動を示すケースがあることが分かっています。

よくある赤ちゃん返りの行動パターンと対応法

パターン1:抱っこ・甘え行動の急増

行動の特徴

  • 常に抱っこを求める
  • 一人でできることをやりたがらない
  • ママから離れたがらない

知育的アプローチ

「お手伝い抱っこ」システム 上の子を抱っこしながら、赤ちゃんのお世話を一緒にする方法です。

実践例:
「○○ちゃんを抱っこしながら、赤ちゃんのオムツを一緒に用意してもらえる?」
→ 抱っこの欲求を満たしながら、責任感も育てる

パターン2:攻撃的行動・反抗的態度

行動の特徴

  • 赤ちゃんを叩こうとする
  • ママに反抗的な態度を取る
  • 物を投げたり壊したりする

知育的アプローチ

感情の言語化トレーニング 赤ちゃん返りは子どもの健全なSOSです。感情を言葉で表現できるよう支援しましょう。

対応例:
子どもが怒った時
「イライラしているのね。○○ちゃんの気持ちを教えて?」
→ 感情を認めつつ、言語化を促す

パターン3:退行行動(できていたことができなくなる)

行動の特徴

  • トイレトレーニングの逆戻り
  • 自分で食事ができなくなる
  • 夜泣きの再開

知育的アプローチ

段階的成功体験システム できることから少しずつ褒めて、自信を回復させます。

段階取り組み内容声かけ例
第1段階小さな成功を見つける「スプーンを持てたね!」
第2段階部分的な達成を褒める「一口自分で食べられたね!」
第3段階完全達成を喜ぶ「全部一人で食べられて、すごいね!」

兄弟バランスを保つ知育対応のコツ

時間管理のバランス戦略

「専用時間」の設定 2人きりの時間を増やしてみてあげてください。下の子が寝ている時や、少しの時間でもご両親に下の子を預けるなど、時間を作って2人だけで過ごしてみましょう。

実践的なスケジュール例

時間帯下の子の状態上の子との過ごし方
午前中授乳・睡眠上の子と知育遊び(15-20分)
お昼寝時睡眠上の子専用時間(30-45分)
夕方比較的落ち着く一緒にお手伝い活動

役割分担で自尊心を育てる

「お兄ちゃん・お姉ちゃん」の特別感 上の子どもにも赤ちゃんのお世話を手伝ってもらうのはどうでしょう?おむつや着替えを持ってきてもらったり、あやしてもらったりして、赤ちゃんのお世話を手伝ってもらいましょう。

年齢別お手伝い内容

年齢できるお手伝い声かけのポイント
2-3歳オムツを持ってくる、歌を歌う「○○ちゃんのおかげで助かったよ」
4-5歳着替えの準備、一緒にあやす「○○ちゃんの歌で赤ちゃんが笑ったね」
6歳以上簡単な授乳補助、寝かしつけ手伝い「○○ちゃんは頼りになるお兄ちゃん/お姉ちゃんだね」

知育要素を取り入れた兄弟ケア活動

一緒に楽しめる知育遊び

赤ちゃんも上の子も楽しめる活動

1. 音楽・リズム遊び

  • 上の子が楽器を演奏し、赤ちゃんに聞かせる
  • 童謡を一緒に歌って、赤ちゃんをあやす
  • リズムに合わせて体を動かす

2. 読み聞かせタイム

実践例:
上の子に「赤ちゃんに本を読んであげて」とお願い
→ 読解力向上+責任感の育成

3. 色・形・数の学習

  • 赤ちゃんのおもちゃを色分けしながら片付け
  • 「赤ちゃんに見せてあげて」と色カードを使用
  • 授乳回数を一緒に数える

感情コントロールを育てる活動

「気持ちカード」システム 上の子の感情を視覚化し、適切な表現方法を学びます。

感情カード対応アクション
うれしい黄色「赤ちゃんに教えてあげよう」
かなしい「ママにぎゅっとしてもらおう」
いかり「深呼吸してから話そう」
びっくりオレンジ「何があったか教えて」

家族全体のサポート体制の構築

パパの役割と連携

夫はもちろん、両親(子どもにとっての祖父母)や、地域のサポートなども含めて周囲に助けてもらいましょう。

効果的な役割分担

担当者主な役割上の子への配慮
ママ基本的なケア統括感情的サポート
パパ上の子との専用時間体を使った遊び
祖父母緊急時サポート特別な体験提供

編集部の取材では、パパが上の子との「男同士/女同士の時間」を作ることで、ママへの負担が軽減され、上の子も満足感を得られるケースが多いことが分かっています。

園や学校との連携

幼稚園・保育園・学校に通っていれば、先生と状況を共有しておくことも大切です。

共有すべき情報

  • 家庭の状況(二人目誕生)
  • 上の子の変化
  • 園での様子の変化
  • 特別な配慮の必要性

NG対応と推奨対応の比較

やってはいけない対応

NG対応問題点子どもへの影響
「お兄ちゃん/お姉ちゃんなんだから」年齢に不相応な責任を押し付ける急に大きな子ども扱いをされて、上の子はこのような状況を受け入れられないと感じることもある
「赤ちゃんにもっと優しくして」感情を否定する罪悪感と混乱を招く
上の子を叱る・否定する上の子を叱ったり、否定したりするような言葉掛けは避けましょう自己肯定感の低下

推奨される対応

推奨対応効果具体例
気持ちを受け入れる安心感の提供「寂しい気持ちなのね、分かるよ」
具体的に褒める自信の回復「○○くん、きょうは自分でごはんが食べられたから、かっこいいパワーがたまったね!」
スキンシップの増加愛情の実感上の子どもをギュッと抱きしめたりして、スキンシップを取ることも大切です

月齢・年齢別の具体的対応策

2-3歳の対応法

特徴

  • 言語表現が未熟
  • 感情のコントロールが困難
  • 身体的な甘えが多い

対応のポイント

・短時間でも密度の濃いスキンシップ
・シンプルな言葉での感情の言語化支援
・ルーティンの維持で安心感を提供

知育活動例

  • 一緒に手遊び歌
  • 簡単なお手伝い(タオルを持ってくる等)
  • 色や形の識別遊び

4-5歳の対応法

特徴

  • 論理的思考の芽生え
  • 正義感の発達
  • 責任感を持ちたがる

対応のポイント

・「お兄ちゃん/お姉ちゃんの特別な仕事」を与える
・説明を交えた納得感のある関わり
・達成感を味わえる活動の提供

知育活動例

  • 赤ちゃんの成長記録作り
  • 簡単な調理のお手伝い
  • 文字や数字の学習(赤ちゃんに教える形で)

6歳以上の対応法

特徴

  • 状況理解能力の向上
  • 複雑な感情の体験
  • 自立心と甘えたい気持ちの葛藤

対応のポイント

・年齢に応じた説明と相談
・個人的な時間と空間の確保
・将来への見通しを共有

知育活動例

  • 家族の計画立て参加
  • 赤ちゃんの発達について学ぶ
  • 自分の成長振り返り活動

専門家の視点:発達心理学から見た兄弟関係

赤ちゃん返りの意味

赤ちゃん返りは子どもの健全なSOSです。これは単なる問題行動ではなく、子どもなりの適応努力の表れです。

発達的意義

  • 愛情確認の手段
  • ストレス対処の学習機会
  • 家族関係再構築のプロセス

長期的な視点での兄弟関係

編集部の追跡調査では、適切に対応された上の子は、最終的により強い兄弟愛と責任感を身につけることが分かっています。

ポジティブな影響

  • 共感能力の発達
  • リーダーシップの芽生え
  • 問題解決能力の向上

ママの心の健康も大切に

完璧を求めすぎない

また、「赤ちゃん返り」は、一時的なものと捉えて、あまり深刻になりすぎないことが大切です。

ママのセルフケア ママがストレスを溜めないことこそが、子どもにもいい影響を与えます。

セルフケア方法効果実践のコツ
短時間の息抜きリフレッシュ5-10分でもOK
感情の言語化ストレス軽減日記や信頼できる人との会話
完璧主義の放棄心の負担軽減「今日できたこと」に注目

サポートネットワークの活用

編集部がおすすめするサポート先をご紹介します。

相談窓口

  • 各自治体の子育て支援センター
  • 保健師による家庭訪問
  • 小児科医への相談
  • 保育園・幼稚園の先生

成功事例:実際の家庭での取り組み

事例1:3歳と0歳の兄弟(Aさん家庭)

状況 次男誕生後、長男の夜泣きと攻撃的行動が激化

取り組み

  1. 毎日15分の「長男専用時間」設定
  2. 長男を「お兄ちゃん先生」として赤ちゃんのお世話に参加
  3. 感情カードを使った気持ちの可視化

結果 2ヶ月後には夜泣きが止まり、積極的に弟の世話をするように変化

編集部の感想:「お兄ちゃん先生」という役割設定が、長男の自尊心を大きく向上させた好例です。

事例2:5歳と0歳の姉妹(Bさん家庭)

状況 長女の退行行動(トイレの失敗、食事の拒否)

取り組み

  1. 段階的成功体験システムの導入
  2. パパとの特別な時間創出(週末の外出)
  3. 長女の「成長アルバム」作成

結果 3ヶ月後には自立行動が復活し、妹への愛情も深まった

困った時のチェックリスト

緊急度判断の基準

以下の症状が見られる場合は、専門家への相談を検討してください。

要注意サイン □ 食事を全く取らない日が続く □ 睡眠障害が1ヶ月以上続く □ 自傷行為や過度の攻撃性 □ 完全に言葉を話さなくなる □ 園や学校への登校拒否

日常的な対応チェック

基本的な対応ができているかチェック □ 上の子の気持ちを言葉で受け止めている □ 毎日少しでも上の子だけの時間を作っている □ 小さな成功も見逃さずに褒めている □ 「お兄ちゃん/お姉ちゃんなんだから」を使っていない □ パパや家族と連携が取れている

よくある質問(Q&A)

Q1: 赤ちゃん返りはいつまで続きますか?

A: 赤ちゃん返りが続く期間は1ヶ月以下~1年以上と幅がありますが、平均では約半年(5.3ヶ月)という調査もあるとされています。ただし、適切な対応により期間を短縮することは可能です。

Q2: 上の子が赤ちゃんを叩こうとします。どうすれば?

A: まず赤ちゃんの安全を確保した上で、上の子の感情を受け止めましょう。「イライラしているのね」と気持ちを言語化し、別の表現方法を一緒に考えることが大切です。

Q3: 働いていて時間が取れません

A: 短時間でも集中的な関わりが効果的です。朝の10分、お風呂の時間、寝る前の読み聞かせなど、日常の中で「今は○○ちゃんだけの時間」と明確にした時間を作りましょう。

まとめ:愛情のバランスで家族みんなが幸せに

赤ちゃん返りは、多くの家庭が経験する自然な現象です。上の子の「荒れ」は、愛情を求める健全なサインであり、適切に対応すれば家族の絆を深める貴重な機会となります。

重要なポイント

  1. 上の子の気持ちを理解し、受け入れる
  2. 知育要素を取り入れた関わりで成長を促す
  3. 家族全体でサポート体制を構築する
  4. ママ自身の心の健康も大切にする

急にお兄ちゃん、お姉ちゃんになった子どもの気持ちにも寄り添って、対応してあげてください。一時的な困難を乗り越えた先には、より深い家族の愛情と、子どもたちの健やかな成長が待っています。

完璧を目指さず、今日できることから始めてみませんか。小さな積み重ねが、きっと大きな変化をもたらすはずです。


参考情報

  • こども家庭庁「児童虐待防止対策」
  • 厚生労働省「子ども虐待対応の手引き」
  • 各自治体子育て支援センター

この記事は、専門家の監修のもと、多くの家庭の実体験を基に作成されています。個別の状況については、専門家にご相談ください。