「しりとりって、ただの言葉遊びじゃないの?」そんな風に思っていませんか?実は、親子でしりとりをすることで、お子さまの脳の発達や学習能力に驚くべき効果があることが分かっています。
**結論から言うと、しりとり遊びは語彙力・記憶力・集中力・聞く力の4つの能力を同時に伸ばし、親子の絆も深める万能な知育遊びです。**特に4~6歳の幼児期に行うことで、小学校入学後の学習基盤を築くことができます。
この記事では、しりとり遊びがお子さまの成長にもたらす具体的な効果と、年齢別の実践方法、さらに飽きずに続けられるアレンジ方法まで、幼児教育を考えるご夫婦に向けて詳しく解説します。
しりとり遊びが子どもの発達に与える効果
1. 語彙力の飛躍的向上
しりとり遊びの最も分かりやすい効果は、語彙力の向上です。しりとりでは、それまで知らなかったさまざまな言葉と出会うことができます。そんな新しく学んだ言葉を言葉遊びの中で使っていくことで、その言葉を使いこなせるようになるでしょう。
研究によると、学習の質に大きく関わる語彙量を増やすことなど基礎的な知識・技能の定着や、感性を豊かに働かせ、身近な出来事から気付きを得て考えることなど、中学年以降の学習の素地を形成していくことが重要とされています。
語彙力向上のメカニズム
段階 | 子どもの状態 | 具体例 |
---|---|---|
第1段階 | 聞いて理解 | 親が「クラリネット」と言った際、「何それ?」と質問 |
第2段階 | 記憶に定着 | 楽器の一種であることを覚える |
第3段階 | 自発的使用 | 自分から「クラリネット」を使ってしりとりをする |
第4段階 | 応用・転用 | 日常会話でも「クラリネット」を使えるようになる |
2. 記憶力と集中力の向上
しりとりは最初の文字が次々と変わり、いろいろな文字で始まる言葉をどんどん思い浮かべる必要があります。想起力を効率よく鍛えることができる、シンプルですばらしいゲームです。
しりとり中の子どもの脳では、以下のような複雑な処理が同時に行われています:
- 短期記憶の活用:前の人が言った言葉を覚えておく
- 記憶検索:頭の中から適切な言葉を探し出す
- 抑制機能:一度使った言葉を使わないよう記憶する
- 集中の維持:ゲームのルールを守り続ける
3. 聞く力(聴覚認知)の発達
この聞く力(聴覚認知)とは話を聞く時や会話をする時に役立つ脳の働きでこの力はとっても大切です。なぜなら、脳の働きの中でも言葉を理解する(理解系)や言葉を発する(伝達系)などとの関係が強いためこの聞く力を伸ばすと言語発達にもつながるのです。
特に男の子は女の子より聴覚認知が苦手な傾向があり、しりとり遊びを通じて自然に聞く力を鍛えることができます。
4. 音韻認識能力の向上
音韻認識とは、言葉を音の単位に分解して理解する能力のことです。例えば「りんご」という言葉を「り・ん・ご」の3つの音に分けて認識できる力です。
ある論文では、「しりとりができるようになることと、文字の読みと音韻認識には相互に密接な関係がある」ことも明らかになっています。
音韻認識の発達段階
年齢 | できること | しりとりでの現れ方 |
---|---|---|
3歳頃 | 音の違いに気づく | 「りんご」と「みかん」の違いが分かる |
4歳頃 | 語頭音の認識 | 「り」で始まる言葉を見つけられる |
5歳頃 | 語尾音の認識 | 「りんご」の最後が「ご」だと理解 |
6歳頃 | 完全な音韻分解 | しりとりルールを完全に理解 |
親子でしりとりをする際の年齢別アプローチ
3歳児への導入方法
3歳のお子さまには、まだ完全なしりとりは難しいかもしれません。まずは言葉への興味を育てることから始めましょう。
おすすめの準備遊び
- 同じ音で始まる言葉集め(「あ」から始まる言葉をたくさん言ってみよう)
- 音の真似っこ遊び(「りんご」の「り」だけ言ってみる)
- 絵本を使った言葉探し
4~5歳児の本格的導入
一般的に4〜5歳の子どもは、友達との交流が増え、新しい言葉を覚えはじめるでしょう。この時期からしりとりの基本ルールを教え始めることができます。
成功のポイント
- ゆっくり待つ:語彙力が未発達な子どもにとって、しりとりは簡単なゲームではありません。しっかりと時間をかけて、ひとつひとつの言葉を頭の奥底から探し出すようにしましょう
- 褒めて伸ばす:正解したときは大げさなくらい褒める
- ヒントを出す:困ったときは「動物の名前で考えてみよう」などヒントを
6歳以上の応用編
6歳を過ぎると、より高度なしりとりアレンジにチャレンジできます。この年齢では、創意工夫や戦略的思考も育てていきましょう。
効果的なしりとり遊びの実践方法
基本的な進め方
ステップ1:環境作り
- 落ち着いて話せる環境を用意
- スマホなどの辞書アプリを手元に準備
- 途中で中断してもOKという雰囲気作り
ステップ2:ルール説明
- 簡単な例で説明(りんご→ゴリラ→ラッパ)
- 「ん」がついたら終わりということを伝える
- 同じ言葉は使わないことを確認
ステップ3:実践開始
- 大人が最初の簡単な言葉を言う
- 子どもが困ったら一緒に考える
- 知らない言葉が出たら必ず説明する
子どもが知らない言葉への対応
「クレーター」「くわ」「クロール」「くろまく(黒幕)」などの言葉を私の息子はあまりよく知らないと思いますので、たまに使ってみたら、楽しそうです。きっと息子は、「え?クレーターってなに?」と尋ねてくるでしょうから、説明してあげたら「へえ~」と、息子も発見があって喜ぶと思います。
説明のコツ
- 実物や写真を見せる
- 子どもが知っているものに例える
- 体験談や思い出と結びつける
飽きずに続けられるアレンジ方法
テーマ別しりとり
食べ物しりとり
- ルール:食べ物の名前だけでしりとり
- 効果:食育にもつながり、好き嫌いの話もできる
- 例:「オムライス→すいか→かぼちゃ→ヤキソバ」
動物しりとり
- ルール:動物の名前だけでしりとり
- 効果:生き物への興味を深める
- 例:「ライオン→ンチウマ(存在しないので「ライオン→ンダマウス(仮想)」は避け、「ライオン→ンジャメナ(地名だが動物ルール外)」も避ける
色しりとり 色を変えて、「青いものしりとり」や「黄色いものしりとり」で遊んでみてもいいです
文字数限定しりとり
文字数 | 難易度 | 対象年齢 | 例 |
---|---|---|---|
3文字 | ★☆☆ | 4歳~ | りんご→ゴリラ→ラッパ |
4文字 | ★★☆ | 5歳~ | えんぴつ→つくえ→えほん |
5文字 | ★★★ | 6歳~ | ひこうき→きりん→んこん |
創作系アレンジ
お話しりとり 何か文章(物語)言い、その最後の文字を使って次の人が文章(物語)を繋げていきます。出来るのであれば、文章の最後につなぎ言葉(接続詞)を入れてみましょう
絵しりとり しりとりなのに言葉は使いません。順番に絵を描くことでしりとりを遊びます。あとで答え合わせをして会話を楽しみます
親子の絆を深めるコミュニケーション効果
対話の質が向上
しりとり遊びを通じて、親子の会話の質が格段に向上します。単純な「今日何したの?」という質問よりも、言葉遊びを通じた自然な対話の方が、子どもは積極的に参加します。
共通の楽しい時間
親子が触れ合いながら一緒に遊びを楽しむことは、子どもの情緒を豊かに育むことにとても大切です。特に幼児期に遊びを通して親子の信頼関係を築くことで、初めて出会うお友達との関わり方などを学ぶ基礎が形成されていきます。
自己肯定感の向上
自分の取り組んでいることの過程や成果をすぐ近くで親に見てもらいたい、そして認めてもらいたいという思いからの行動です。そしてその成果に気づいてもらったり、認められることで、自己肯定感が生まれると、自分自身のことが好きになり、子どもの自信にもつながるのです。
しりとり遊びを始める前に知っておきたいこと
適切な開始時期の見極め
お子さまがしりとりを始める準備ができているかの目安:
チェックリスト
- [ ] ひらがなに興味を示している
- [ ] 2~3語文で話せる
- [ ] 集中して5分程度の活動ができる
- [ ] 簡単なルールのある遊びを理解できる
- [ ] 「最初の音」「最後の音」の概念を理解している
よくある間違いと対処法
間違い1:完璧を求めすぎる → 最初は音の認識ができていればOK
間違い2:長時間続けようとする → 5-10分程度で十分、短時間で楽しく
間違い3:勝敗にこだわる → 勝ち負けを競うのではなく、しりとりを長く続けることを目的とした遊び方です
場面別しりとり活用法
移動時間の活用
車の中で
- 外の風景を見ながら「見えるものしりとり」
- 目的地までの時間を有効活用
電車やバスで
- 声の大きさに注意しながら
- 手話や指文字を交えても楽しい
待ち時間の活用
病院の待合室で
- 静かな声でできる
- 不安を和らげる効果も
レストランで
- 料理が来るまでの時間つぶし
- 食べ物関連のテーマがおすすめ
家事中の活用
料理をしながら
- 料理に使う材料でしりとり
- 食材への興味を深める
掃除をしながら
- 家の中にあるものでしりとり
- 片付けへの意欲も向上
デジタル時代におけるしりとり遊びの価値
アナログ遊びの重要性
幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものですとされており、デジタル機器に頼らない遊びの価値が見直されています。
しりとり遊びのアナログな価値
- 道具を使わない手軽さ
- 親子の直接的なコミュニケーション
- 創造性と想像力の育成
- リアルタイムの反応と共感
他の知育との組み合わせ
絵本との連携
- しりとりに出てきた言葉の絵本を読む
- 絵本のキャラクターでしりとり
工作との組み合わせ
- しりとりで出た言葉を絵に描く
- 粘土で作品作り
専門家からのアドバイス
言語発達の観点から
幼児は、身体感覚を伴う多様な活動を経験することによって、生涯にわたる学習意欲や学習態度の基礎となる好奇心や探究心を培い、また、小学校以降における教科の内容等について実感を伴って深く理解できることにつながる「学びの芽生え」を育んでいる。
早期教育との違い
この幼児期の発達の特性に照らした教育とは、受験などを念頭におき、専ら知識のみを獲得することを先取りするような、いわゆる早期教育とは本質的に異なる。
しりとり遊びは詰め込み型の早期教育ではなく、子どもの自然な発達を促す遊びです。
トラブル対処法とよくある質問
Q1. 子どもが負けて泣いてしまいます
A. 負けた子がくやしくて泣いてしまうと、公共交通機関で周囲への迷惑が気になるのはもちろん、自家用車でも閉鎖された空間で大声で泣かれるのは辛いものがあります
対処法:
- 勝敗をつけない協力型のルールに変更
- 「みんなで○個言葉を見つけよう」という目標設定
- 「今日は新しい言葉を覚えることが目的」と伝える
Q2. 同じ言葉ばかり使ってしまいます
A. 私の長男と次男で『しりとり』をしているのをみて思ったのが、ワンパターンが多いのです。お互い、ボキャブラリー(語彙)が少ないため、『しりとり』→『りんご』→『ごりら』→『ラッパ』→『パンダ』→・・・
対処法:
- 大人が意図的に違う言葉を使う
- テーマを決めて新しい分野の言葉に触れる
- 絵本や図鑑を参考にする
Q3. ルールを理解してくれません
A. 3-4歳の子どもには音韻認識がまだ発達段階なので当然です。
段階的アプローチ:
- まずは音の認識から(「りんご」の「り」を意識する)
- 同じ音で始まる言葉集め
- 簡単なしりとりから開始
まとめ:しりとり遊びで育む豊かな未来
親子でのしりとり遊びは、単なる暇つぶしではありません。お子さまの語彙力・記憶力・集中力・聞く力を同時に育て、親子の絆を深める貴重な時間です。
今日から始められる3つのステップ
- お子さまの発達段階を確認:年齢と能力に合わせたアプローチを選択
- 環境を整える:落ち着いて遊べる時間と場所を確保
- 楽しい雰囲気作り:勝敗よりも共に過ごす時間を大切に
語彙力や集中力なんてまずは忘れて、子どもと本気で対戦してください。負けても勝っても、「またしりとりしようよ」と子どもが言ってきたら、、、パパママの勝ちですね。
幼児教育において最も大切なのは、お子さまが「学ぶって楽しい」と感じること。しりとり遊びを通じて、その第一歩を踏み出してみませんか?
今度のお休みの日、移動中のちょっとした時間に、「しりとりやる?」の一言から、お子さまの未来を育む特別な時間を始めてみてください。
参考文献・出典
- 文部科学省「幼児教育の重要性・遊びを通した学び」
- 各種研究論文および教育機関資料