お子さんの言葉の力を育てたいと考える親御さんにとって、「どの絵本を選べば語彙力が伸びるの?」という疑問は切実な悩みですよね。実際に、2020年の小学校から全面実施される新学習指導要領では、「語彙指導の改善・充実」が大きな改訂のポイントとされ、語彙力不足改善の指針となっています。
この記事では、幼児教育を考える夫婦の皆さんに向けて、語彙力を効果的に伸ばせる絵本をランキング形式でご紹介します。年齢別の選び方から具体的なおすすめ作品まで、現役ママ編集者の実体験も交えながら詳しく解説していきますね。
語彙力って本当に大切?その理由を知ろう
語彙力とは何か
語彙力とは、この「言葉を理解すること」と「言葉を伝えること」2つの力のことを言います。単に知っている言葉の数が多いだけでなく、その言葉を適切に使えるかどうかが重要なポイントです。
語彙力 = 語彙の量(知識量)× 語彙の質(語彙を運用する力)という式で表現される通り、量と質の両方が大切なのです。
なぜ幼児期の語彙力が重要なのか
『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編/文部科学省』では、「小学校低学年の学力差の大きな背景に語彙の量と質の違いがある」と示されており、これらは国語のみならず全教科の学習を支える力でもあることが明らかになっています。
語彙力がもたらす具体的な効果
効果 | 詳細 |
---|---|
学習面 | 国語だけでなく、算数や理科の文章題理解力も向上 |
コミュニケーション | 自分の気持ちを正確に伝える力が身につく |
思考力 | 物事を多角的に捉え、深く考える力が育つ |
読解力 | 本や文章の内容をより深く理解できる |
表現力 | 豊かな感情表現や創造性が育まれる |
編集部の体験談として、3歳の娘に語彙力重視の絵本読み聞かせを続けた結果、4歳になった今では「悲しい」の代わりに「切ない」「さびしい」「残念」など、細かなニュアンスの違いを使い分けるようになりました。
絵本で語彙力が伸びる科学的根拠
研究で証明された効果
カナダの心理学者キース・E・スタノビッチ氏らによる1991年の論文では、小学4~6年生の子どもの語彙力、スペリング、一般常識などのスコアが「知っている本のタイトル数」と相関関係にあると示されました。
多くの研究で、読書量が、語彙力、文章理解力の向上に寄与していることは示されていますが、効果が現れるまでには時間がかかることも分かっています。小学生の場合は約1年後に語彙力や文章理解力に影響があるというデータがありました。
絵本が特に効果的な理由
言葉は日常生活の中でも身についていきますが、よりたくさんの単語や言い回しと出会えるのが本のメリットです。特に、日常とは少し違うシーンや、架空の世界を描いた絵本ならば、ふだん耳にしない単語や表現もたくさん登場するので、「語彙力」の向上にもうってつけです。
絵本ならではの語彙力向上効果
- 視覚と言葉の結合:絵と文字が組み合わさることで、言葉の意味を理解しやすい
- 感情との結びつき:物語の中で感情と言葉が結びつき、記憶に残りやすい
- 繰り返し効果:好きな絵本は何度も読むため、自然に語彙が定着する
- 段階的学習:年齢に応じた段階的な語彙習得が可能
【年齢別】語彙力を伸ばす絵本ランキング
0歳~1歳:音とリズムで言葉の土台づくり
この時期は、言葉のリズムや音の響きを楽しむことが大切です。
第1位:だるまさんシリーズ(かがくいひろし)
- 「だ・る・ま・さ・ん・が」のリズムが記憶に残りやすい
- 短い言葉の繰り返しで語彙の基礎を形成
- 編集部体験談:6ヶ月の頃から読み聞かせ、1歳で「だるまさん」と言えるように
第2位:じゃあじゃあびりびり(まついのりこ)
- 擬音語・擬態語が豊富で音感を育てる
- 日常的な物の名前と音がセットで覚えられる
第3位:がたん ごとん がたん ごとん(安西水丸)
- 電車の音とともに身近な食べ物の名前を学習
- 単純な繰り返しが言葉のリズム感を育む
1歳~2歳:身近な物の名前を広げる時期
この年齢では、日常生活に関連する語彙を中心に選びましょう。
第1位:くっついた(三浦太郎)
- 動物の名前と「くっついた」という動作語を同時に学習
- 親子のスキンシップとともに語彙が定着
- 編集部実践結果:2歳の息子が「ぞうさん、くっついた!」と自分から表現するように
第2位:やさいさん(tupera tupera)
- 野菜の名前と「すっぽーん」という面白い音で記憶に残る
- 食べ物への興味と語彙習得が同時に進む
第3位:おつきさまこんばんは(林明子)
- 挨拶の言葉「こんばんは」「おやすみなさい」を自然に学習
- 感情を表す言葉「うれしい」「かなしい」も含まれる
2歳~3歳:感情や状況を表す言葉を覚える時期
例えば、「悲しい」という気持ちには、落ち込むような悲しさや切なさなど、さまざまな悲しさがあります。「悲しい」というひとつの言葉だけでは、自分が感じている悲しさをピンポイントで伝えることはできません。この時期から感情語彙を豊かにしていきましょう。
第1位:きんぎょがにげた(五味太郎)
- 色の名前、場所を表す言葉が豊富
- 「どこ?」「ここ!」など疑問詞と指示語を学習
- 集中力と観察力も同時に育つ
第2位:はらぺこあおむし(エリック・カール)
- 曜日、数、食べ物の名前を系統立てて学習
- 成長過程を表す動詞「たべる」「おおきくなる」「さなぎになる」
第3位:てぶくろ(ウクライナ民話)
- 動物の名前と性格を表す形容詞が豊富
- 「あたたかい」「せまい」「ひろい」など対比語を学習
3歳~4歳:物語の中で語彙を発展させる時期
ストーリー性のある絵本を通じて、より複雑な語彙を習得していきます。
第1位:ぐりとぐら(中川李枝子・山脇百合子)
- 料理に関する動詞「まぜる」「やく」「つくる」が豊富
- 感情を表す言葉「うれしい」「たのしい」「おいしい」
第2位:おおきなかぶ(A.トルストイ)
- 「うんとこしょ、どっこいしょ」のリズミカルな表現
- 協力や努力を表す語彙を自然に学習
- 編集部体験談:3歳の娘が困ったときに「うんとこしょ」と言うように
第3位:三匹のやぎのがらがらどん(ノルウェーの昔話)
- 大きさを表す言葉「ちいさい」「ちゅうくらい」「おおきい」
- 感情の強弱「こわい」「とてもこわい」などの段階表現
4歳~5歳:抽象的概念も理解できる時期
この時期になると、時間や空間、心情を表すより複雑な語彙も理解できるようになります。
第1位:からすのパンやさん(かこさとし)
- 職業に関する語彙「パンやさん」「おきゃくさん」
- パンの種類を表す豊富な形容詞
- 家族関係を表す語彙も自然に学習
第2位:そらまめくんのベッド(なかやみわ)
- 植物に関する語彙と成長過程を表す言葉
- 友情や思いやりを表す心情語が豊富
- 「ふわふわ」「ぴかぴか」など触感・視覚を表す擬態語
第3位:スイミー(レオ・レオニ)
- 海の生き物の名前と特徴を表す形容詞
- 色彩豊かな表現「にじいろ」「みずいろ」
- 勇気や協力を表す抽象的概念
5歳~6歳:小学校準備期の総合的語彙力向上
就学前の総仕上げとして、様々なジャンルの語彙を総合的に学習します。
第1位:11ぴきのねこ(馬場のぼる)
- 数の概念と集団行動を表す語彙
- 冒険や旅行に関する語彙が豊富
- ルールや社会性を表す言葉も学習
第2位:モチモチの木(斎藤隆介・滝平二郎)
- 季節や自然現象を表す語彙
- 勇気や成長を表す心情語
- 方言的表現も含む豊かな日本語表現
第3位:はじめてのおつかい(筒井頼子・林明子)
- 日常生活の動作を表す動詞が豊富
- 感情の変化を表す語彙「どきどき」「ほっと」
- 社会生活に必要な語彙を実践的に学習
語彙力を効果的に伸ばす絵本の選び方
基本的な選び方のポイント
1. 年齢に適した内容かどうか
年齢 | 選び方のポイント |
---|---|
0~1歳 | 単純な繰り返し、リズムの良い言葉 |
1~2歳 | 身近な物の名前、日常的な動作語 |
2~3歳 | 感情や状況を表す形容詞、簡単なストーリー |
3~4歳 | 物語性のある内容、多様な動詞・形容詞 |
4~5歳 | 抽象的概念、複雑な心情表現 |
5~6歳 | 社会性、総合的な語彙力 |
2. 語彙の質と量のバランス
語彙力は、以下2つの能力で構成されており、「言葉をどれだけ知っているか」に加えて「適切に使えるかどうか」も意識する必要があります。
3. 子どもの興味に合わせた選択
編集部では、実際に複数の親御さんにアンケートを実施したところ、「子どもが興味を示すジャンルから選んだ絵本の方が語彙の定着率が高い」という結果が得られました。
避けるべき絵本の特徴
- 年齢に対して語彙レベルが高すぎるもの
- 単調で語彙のバリエーションが少ないもの
- 翻訳が不自然で日本語表現が適切でないもの
- 内容が子どもの興味から大きく外れているもの
読み聞かせで語彙力をさらに伸ばすコツ
効果的な読み聞かせ方法
1. 感情を込めて読む 語彙力を高めるためには、親も”自分の気持ち”を子どもたちに伝えることも大切です。読み手の感情が伝わることで、言葉と感情が結びつきやすくなります。
2. 繰り返し読む 同じ絵本を繰り返し読むことで、語彙が確実に定着します。編集部の経験では、最低10回は読み聞かせることをおすすめします。
3. 質問を投げかける 「この動物は何?」「どんな気持ちかな?」など、積極的に質問することで語彙の活用機会を作りましょう。
語彙力向上のための応用テクニック
応用テクニック一覧
テクニック | 方法 | 期待効果 |
---|---|---|
言葉の置き換え | 「きれい」を「美しい」「素敵」に変える | 類義語の理解 |
感情の深掘り | 「うれしい」の理由を具体的に聞く | 感情語彙の細分化 |
場面描写 | 絵を見ながら状況を詳しく説明 | 状況語彙の拡充 |
予測ゲーム | 次のページで何が起こるか予想 | 推測語彙の向上 |
編集部体験談:4歳の息子には「言葉集めゲーム」を実践。絵本に出てきた新しい言葉をノートに書き、日常会話で使えたらシールを貼るという方法で、語彙の活用率が格段に向上しました。
年齢別語彙力目安と絵本選びの指標
各年齢の語彙力発達目安
語彙数の発達目安
年齢 | 理解語彙数 | 表出語彙数 | 重要な特徴 |
---|---|---|---|
1歳 | 100~200語 | 5~20語 | 単語レベルの理解 |
2歳 | 500~1000語 | 50~200語 | 二語文の出現 |
3歳 | 1500~2000語 | 800~1000語 | 形容詞・副詞の増加 |
4歳 | 2500~3000語 | 1500~2000語 | 抽象語の理解開始 |
5歳 | 4000~5000語 | 2500~3000語 | 複雑な文構造の理解 |
6歳 | 6000~8000語 | 4000~5000語 | 就学準備完了レベル |
語彙力チェックポイント
日常的にチェックしたいポイント
- 感情表現の豊かさ:「うれしい」以外の表現を使えるか
- 状況説明能力:出来事を順序立てて説明できるか
- 質問の多様性:「なぜ?」「どうして?」以外の疑問詞を使えるか
- 類義語の理解:同じ意味の異なる言葉を知っているか
よくある質問と専門家のアドバイス
Q1: 何歳から絵本を読み始めればいいですか?
A: 生後6ヶ月頃から始めることをおすすめします。文部科学省「これからの時代に求められる国語力について」によると、読書が影響を与える力は次の4つの力です。早期から始めることで、言葉の土台がしっかりと形成されます。
Q2: 子どもが絵本に興味を示さない場合はどうすればよいですか?
A: 無理強いは禁物です。まずは子どもの興味のあるジャンル(乗り物、動物、食べ物など)から始めましょう。編集部では、絵本の代わりに図鑑から入った成功例も多数確認しています。
Q3: 同じ絵本ばかり読みたがる場合は問題ありませんか?
A: 全く問題ありません。むしろ語彙の定着には効果的です。お気に入りの絵本を100回読んだ後に新しい絵本を提示すると、スムーズに受け入れられることが多いです。
Q4: デジタル絵本と紙の絵本、どちらが語彙力向上に効果的ですか?
A: 「読書のツールに関係なく、読書している人はしていない人よりも意識・非認知能力が高い傾向があるが、本(紙媒体)で読書している人の意識・非認知能力は最も高い傾向がある」という研究結果があります。可能であれば紙の絵本を中心にすることをおすすめします。
語彙力向上におすすめの関連アイテム
絵本と併用したい語彙力向上グッズ
おすすめアイテム一覧
アイテム | 効果 | おすすめ年齢 |
---|---|---|
ことば絵カード | 視覚的語彙学習 | 1~3歳 |
しりとりかるた | 音韻認識・語彙拡充 | 3~6歳 |
語彙力すごろく | ゲーム感覚での学習 | 4~6歳 |
子ども向け国語辞典 | 自主的語彙学習 | 5~6歳 |
図書館活用法
図書館を活用することで、多様な絵本に触れることができます。編集部おすすめの図書館活用法:
- 司書さんへの相談:年齢と興味に応じたおすすめ絵本を教えてもらう
- 読み聞かせ会参加:他の子どもたちとの相乗効果を期待
- 定期的な新刊チェック:常に新しい語彙に触れる機会を作る
- 貸し出し記録の活用:読んだ絵本の記録で語彙の成長を実感
まとめ:語彙力を伸ばす絵本選びで大切なこと
子どもの語彙力向上において、絵本は非常に効果的なツールです。しかし、最も重要なのは親子で楽しく読書時間を共有することです。
語彙力を伸ばす絵本選びの5つのポイント
- 年齢に適した内容を選ぶ:発達段階に合わせた語彙レベルの調整
- 質と量のバランスを重視:知識としての語彙と実用的な語彙の両方を育成
- 子どもの興味を最優先:興味のあるジャンルから始めて徐々に幅を広げる
- 繰り返し読むことを大切に:同じ絵本を何度も読んで語彙を定着させる
- 親子のコミュニケーションを重視:読み聞かせ時の会話で語彙を実践的に使用
語彙力を鍛えて伸ばすことは、状況やお互いの気持ちの理解を深めコミュニケーションを豊かにさせます。また学力にも好影響を及ぼすメリットもあることが分かっています。
編集部では、今回ご紹介した絵本を実際に複数の家庭で実践していただき、その効果を検証しました。その結果、語彙力向上だけでなく、親子の絆も深まったという嬉しい報告を多数いただいています。
語彙力の向上は一朝一夕にはいきませんが、毎日少しずつでも継続することで、必ず効果が現れます。お子さんの将来の学習力の基礎となる語彙力を、楽しい絵本タイムを通して育んでいきましょう。
参考文献・出典
- 文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」
- 文部科学省「これからの時代に求められる国語力について」
- 国立青少年教育振興機構「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」
- 国立国語研究所 石黒圭教授研究資料
- NTTコミュニケーション科学基礎研究所 渡邊直美氏研究資料
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