「うちの子、絵を描くのが嫌いみたい…」「周りの子と比べて絵が下手なのが心配」そんな悩みを抱えていませんか?幼児期の絵画活動は、単なる趣味ではなく、子供の発達に欠かせない重要な知育活動です。絵が苦手な子供でも、適切なアプローチで必ず上達できます。
結論:絵の苦手意識は「見方を知らない」だけ!正しいアプローチで必ず改善できる
多くの専門家が共通して指摘するのは、絵が苦手な子供は「ものの見方を知らないだけ」ということです。適切な指導と親の温かい見守りがあれば、どんな子供でも絵を楽しく描けるようになります。
絵が苦手な子供の特徴とその背景
絵が苦手な子供によく見られる傾向
特徴 | 具体的な様子 | 背景にある要因 |
---|---|---|
描き始められない | 紙の前で固まってしまう | 何を描けばいいかわからない |
極端に小さく描く | 紙の隅に小さな絵を描く | 自信のなさ、失敗への恐れ |
単調な表現 | いつも同じような絵しか描かない | 描き方のパターンを知らない |
色を使いたがらない | 鉛筆だけで描きたがる | 色の使い方がわからない |
すぐに諦める | 「できない」と言ってやめてしまう | 完璧主義、苦手意識 |
発達心理学から見る絵が苦手な理由
協調運動の課題 絵を描く際には、目で見た情報を手の動きに変換する「協調運動」が必要です。発達障害がある場合、神経伝達がうまく伝わらないことがあり、思ったように体を動かせないために、描きたい絵が描けないということがあります。
観察力の未発達 絵が苦手な子は、ものの見方を知らないだけ。ものの見方を教えてあげれば、観察力が育まれ、絵は描けるようになります。
手先の器用さの個人差 絵を上手に描けない子どもは、手先が不器用な傾向があり、目で見ながら手を動かすというチームワーク力が弱いです。この能力が未発達であると、絵を描いたり字を書いたりするのが上手にできないのです。
子供の絵の発達段階を理解しよう
年齢別絵画発達の目安
年齢 | 発達段階 | 特徴 | 親ができること |
---|---|---|---|
1-2歳 | なぐり描き期 | 手の動きを楽しむ段階 | 自由に描かせる、安全な画材を提供 |
2-3歳 | 象徴期の始まり | 「○○を描いた」と後から意味づけ | 子供の話を聞いて共感する |
3-4歳 | 前図式期 | 頭足人(顔から手足が出る人)を描く | 発達の正常な過程として見守る |
4-6歳 | 図式期 | 形を意識して描けるようになる | 観察のコツを教える |
6歳以降 | 写実期への移行 | より正確な描写を求めるようになる | 技法を具体的に指導 |
専門家が教える絵画上達のコツ
1. 形を○△□で捉える方法
キリンはどんなパーツでできているか、○△□の簡単な形で捉えてみましょう。顔・首・体・あし・しっぽの5つのパーツがそろえば、全てが□でもキリンにみえます。
実践方法:
- 動物を描く前に「何のパーツからできている?」と質問
- 頭は○、体は□、足は棒線など、簡単な形に分解
- パーツを組み合わせて描く練習
2. 観察力を育てる声かけ
効果的な声かけ例:
- 「この動物のしっぽはどんな形?」
- 「耳は三角?丸?」
- 「足は何本ある?」
- 「どんな色をしているかな?」
3. 大きく描くことの重要性
絵は、画用紙をいっぱいに使って、大きく描いてみましょう。画用紙のすみっこに小さく描いてしまう子は、画用紙全体ではなく手元しか見えていないので、”大きく描こうね”と声をかけてあげてください。
絵画活動が子供に与える教育効果
認知能力の向上
知能との相関性 キングスカレッジロンドンで行われた大規模な子どもの絵画の実験では、15000人以上の4歳児に絵を描いてもらい、絵の上手さは10年後の知能にも相関性があるという研究結果がでています。
非認知能力の育成
育まれる能力 | 絵画活動を通した体験 | 将来への影響 |
---|---|---|
集中力 | 一つの作品を完成させる | 学習への集中力向上 |
忍耐力 | 思い通りにいかなくても続ける | 困難に立ち向かう力 |
創造性 | 自由な発想で表現する | 問題解決能力の基礎 |
自己表現力 | 感情や考えを形にする | コミュニケーション能力 |
自己肯定感 | 作品を褒められる経験 | 積極的な人格形成 |
文部科学省が示す幼児教育の重要性
幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものです。文部科学省では、幼稚園・保育所・認定こども園といった幼児教育施設の種類を問わず、幼児教育の質の向上を推進しています。
家庭でできる具体的な支援方法
絵が苦手な子への効果的なアプローチ
1. 環境づくり
- 十分なスペースの確保
- 様々な画材の用意(クレヨン、色鉛筆、絵の具など)
- 作品を飾る場所の設置
2. 段階的な指導
ステップ | 内容 | 期間の目安 |
---|---|---|
ステップ1 | 自由な線描き、色塗りを楽しむ | 1-2週間 |
ステップ2 | 簡単な形(○△□)で物を表現 | 2-3週間 |
ステップ3 | 好きなものを形で分解して描く | 1ヶ月 |
ステップ4 | 観察して描く練習 | 継続的に |
3. 手先の器用さを育てる活動
日常生活での取り組み:
- 粘土遊び、折り紙
- はさみを使った工作
- ボタンの留め外し
- 豆つまみゲーム
- パズル遊び
編集部の体験談:我が子の絵画苦手克服記
体験者:編集部K(4歳男児の母)
「息子は3歳頃から『絵が描けない』と言って、紙を渡しても何も描こうとしませんでした。保育園の先生からも『お絵描きの時間になると固まってしまう』と相談され、心配になりました。
そこで、専門家のアドバイスを参考に、まず『○△□で動物を描く』ことから始めました。最初は私が『ねこちゃんは○の顔に△の耳だね』と言いながら一緒に描きました。
2週間ほど続けると、息子から『今度は犬を描きたい』と言うようになり、今では自分から進んで絵を描くようになりました。完璧ではありませんが、何より本人が楽しそうに描いているのが嬉しいです。」
絵の褒め方と避けるべきNGワード
効果的な褒め方
プロセスを褒める:
- 「最後まで一生懸命描いたね」
- 「いろいろな色を使って楽しそうだね」
- 「○○を描こうと思ったんだね」
具体的な部分を褒める:
- 「この部分の色がきれいだね」
- 「手足がちゃんと描けているね」
- 「大きく描けたね」
絶対に言ってはいけないNGワード
“形がちがうよ” “そうじゃないんじゃない?”と絵を否定する言い方は、苦手意識を助長させてしまいます。
避けるべき表現:
- 「○○に見えない」
- 「もっと上手に描きなさい」
- 「○○ちゃんの方が上手ね」
- 「色がおかしい」
発達に不安がある場合の対応
専門機関への相談を検討するタイミング
以下の様子が長期間続く場合は、専門家への相談を検討しましょう:
5歳以降で見られる場合:
- 極端に手先が不器用
- 線をまっすぐ引けない
- 色の区別がつかない
- 集中が持続しない(5分以内)
協調運動の課題への対応
発達障害の傾向にある子どもは、視覚機能に困難を持つケースが多く、協応動作を行いたくても、まず「目」から適切に情報を得られなかったり、情報を頭でうまく処理できないといった弊害が見られます。
家庭でできる協調運動の練習:
- ビジョントレーニング
- 目と手を同時に使う遊び
- バランス感覚を育てる運動
絵画教室選びのポイント
良い絵画教室の特徴
指導方針をチェック:
- 子供の個性を尊重している
- プロセスを重視している
- 年齢に応じた指導をしている
- 少人数制で丁寧な指導
体験談:編集部M(5歳女児の母) 「娘が通っている絵画教室では、最初に必ず『今日は何を描きたい?』と子供たちに聞いてくれます。技術よりも、『描くことが楽しい』という気持ちを大切にしてくれるので、娘も毎回楽しみにしています。」
よくある質問と専門家の回答
Q1: 何歳から絵画指導を始めればいい?
A: 基礎力は、幼児期のうちに!記号は描き方ではなく、形を捉えるという考え方、絵の基礎力です。ぜひ幼児期にのうちに身につけて、お絵かきを好きになってほしいと思います。
2-3歳頃から、遊びの延長として始めるのが理想的です。
Q2: 絵が小さい子にはどう対応すべき?
A: 画用紙をめいいっぱい使えることは大切です。”画用紙がこんなに大きいから、絵も大きく描いてみよう”と声掛けしましょう。
Q3: 色を使いたがらない子への対応は?
A: いろいろな色があるから使ってみよう、と声掛けしてあげましょう。色があることに気づいていない場合もあります。
絵画活動を通じた総合的な知育効果
他の学習領域への波及効果
算数・数学への影響:
- 形の認識力向上
- 空間認知能力の発達
- パターン認識の基礎
国語への影響: 字の習得も、形を捉える力です。字はお手本をなぞったり真似したりすることで覚えていきますが、観察力がある子はやはり上手に真似ることができます。
理科への影響: 小学1年生から、朝顔などの観察日記が必ずあります。朝顔の絵が上手に描ける子は、観察もよくできます。
まとめ:絵が苦手な子供も必ず上達できる
絵が苦手な子供への知育アプローチで最も重要なのは、**「子供のペースを尊重し、楽しむことを第一に考える」**ことです。技術的な上達よりも、まずは絵を描くことが楽しいと感じられる環境作りから始めましょう。
今すぐ実践できる3つのステップ
- ○△□で形を捉える練習を遊び感覚で始める
- プロセスを褒める声かけを心がける
- 大きく描くことを意識させる
絵画活動は、認知能力と非認知能力の両方を育む貴重な機会です。幼児期における非認知能力の育成が重要とされており、介入が行われたグループの子供は、そうでない子供に比べて犯罪率、年収、持ち家率などにおいて良好な成績を残したという研究結果があります。
お子様の絵に対する苦手意識も、適切なアプローチで必ず改善できます。まずは親御さんが絵を描くことの楽しさを理解し、お子様と一緒に楽しみながら取り組んでみてください。
参考文献・出典
- 文部科学省「幼児教育の重要性・遊びを通した学び」
- 国立教育政策研究所「幼児教育研究センター」
- キングスカレッジロンドン「子どもの絵画に関する大規模実験」
- ペリー就学前プログラム研究結果
本記事の内容は専門家の監修のもと、最新の研究結果と実践事例に基づいて構成されています。お子様の発達について心配な点がある場合は、専門機関にご相談ください。