はじめに
「うちの子、名前を呼んでも全然振り向いてくれない…」そんな悩みを抱えている親御さんは少なくありません。0歳から1歳頃の赤ちゃんが名前を呼んでも反応しないのは、まだ「自分」という認識が発達していないため、実は珍しいことではありません。
しかし、子どもの脳はまだ未熟で発達途中であり、名前を呼ばれたことに気付く→返事をするという脳のネットワークがまだできていない可能性があります。この記事では、名前を呼んでも反応しない子供の心理的・発達的背景から、具体的な対応方法まで、幼児教育を考える夫婦に向けて詳しく解説します。
結論: 名前を呼んでも反応しない子供への対応は、発達段階を理解し、適切な声かけ方法を実践することで改善できます。ただし、他の発達の気になる点と合わせて専門機関への相談も重要です。
子供が名前を呼ばれても反応しない理由
発達段階による自然な現象
「自分」を認識するのは1歳ごろからで、このころはまだ「自分」という認識がないので、名前を呼んでも反応しないのは不思議なことではありません。
年齢別の名前への反応の発達目安を以下の表にまとめました:
年齢 | 名前への反応の特徴 | 発達の目安 |
---|---|---|
0-6ヶ月 | 音への反応はあるが、名前の認識は困難 | 大きな音や親の声に反応 |
7-11ヶ月 | 徐々に自分の名前を認識し始める | 時々振り向くが、一貫性はない |
1歳前後 | 自分の名前への認識が確立 | 呼ばれると振り向くことが増える |
1歳半以降 | 名前に対して明確に反応 | 「はーい」などの返事ができるように |
2-3歳 | 集中している時以外は安定した反応 | 意図的に無視することもある |
集中による反応の欠如
発達障害やグレーゾーンの子どもに多いと言われている過集中が、返事をしない理由の1つになることがあります。1歳の子どもはまだ脳の発達が十分ではないので、目の前のことにしか集中できず、周りの音などに気付きにくいのが特徴です。
過集中の特徴:
- 好きな遊びに没頭している時
- テレビやタブレットを見ている時
- 新しいおもちゃに夢中になっている時
- 絵本の読み聞かせに集中している時
聴力の問題の可能性
名前を呼んでも反応がないときの状況には、後ろから呼んだ時(顔が見えていない時)には振り向かない、繰り返し呼ばないと振り向かない、大きな声で呼ばないと振り向かないなどがあり、聴力の問題も考慮する必要があります。
発達上の気がかりの可能性
上記の内容で、半数以上が当てはまる場合、自閉症スペクトラム症等の発達障害の可能性がございますが、多くの場合、2歳~3歳ころに判断されるケースが多く、1歳半頃は、発達について個人差が大きく、環境などにも左右されやすい時期です。
年齢別:名前への反応の発達過程
0歳後半(6-11ヶ月)
この時期の赤ちゃんは:
- 音への反応は示すが、自分の名前という概念はまだ発達していない
- 音の出るおもちゃなどに反応すれば、問題ないでしょう
- 親の声の方向を向くことはあるが、一貫性はない
編集部体験談: 「うちの息子は10ヶ月の頃、名前を呼んでもほとんど振り向きませんでした。でも、おもちゃの音や音楽には敏感に反応していたので、聴力は問題ないと分かりました。1歳過ぎから徐々に名前に反応するようになったので、個人差があることを実感しました。」(編集部・田中)
1歳前後
名前を呼ばれて「自分」を認識し、反応するようになるのは1歳ごろからです。この時期の特徴:
- 自分の名前を認識し始める
- 時々振り向くが、まだ一貫性はない
- 機嫌や状況によって反応が変わる
1歳半以降
名前を呼んで『はぁい♪』と返事が出来る様になったのが⑩・⑪ヶ月の頃で、今①歳と③ヶ月ですが最近になって振り向く様になりましたという例もあり、発達には個人差があります。
2-3歳
この時期になると:
- 名前への反応は安定する
- 2歳ごろは、気分が乗らなかったり、他の遊びに集中していることが多い
- 意図的に無視することもある(これも発達の一部)
効果的な声かけ方法と練習テクニック
基本的な声かけのコツ
まず、ママがお子さんの近くまで行きましょう。遠くから名前を呼ぶとどうしても声が大きくなり、怒っていないのに怒っているように聞こえてしまう可能性があるため、できるだけ手を止めて、ママがお子さんの視界に入ってアイコンタクトをとるようにしましょう。
効果的な声かけの5ステップ:
- 子供の近くに行く
- 離れた場所から呼ばずに、まずは近づく
- 子供の視界に入る位置に移動
- アイコンタクトを取る
- 子供と目線を合わせる
- 必要に応じて軽く肩に触れる
- 優しく明確に名前を呼ぶ
- 名前を呼ぶときは声のトーンをあげて、優しくゆっくりと呼ぶようにしました
- 怒っているような口調は避ける
- 返事を待つ
- 子供が反応するまで少し時間を与える
- せかしたり、連続で呼び続けない
- 反応があったら褒める
- 振り向いたり返事をしたら必ず褒める
- 「上手にお返事できたね」など具体的に褒める
返事の練習方法
「〇〇くん、はーい!」というお返事のやりとりを通して学んでいきましょう。まず、お子さんの正面に座り、お子さんと目線が合った状態で「〇〇くん!」と呼びかけます。お子さんと一緒に「はーい!」と手を挙げてお返事をしましょう。
段階的な練習方法:
段階 | 練習内容 | ポイント |
---|---|---|
第1段階 | 名前を呼んで一緒に手を挙げる | 大人が見本を見せながら |
第2段階 | 名前を呼んで子供の反応を待つ | 5秒程度待ってから促す |
第3段階 | 返事ができたら大げさに褒める | 「すごいね!」「上手!」など |
第4段階 | 日常的な場面で練習を継続 | 食事前、お風呂前など |
環境を整える工夫
集中しやすい環境作り:
- テレビや音楽を消す
- おもちゃは片付けておく
- 落ち着いた雰囲気で行う
練習のタイミング:
- 子供が機嫌の良い時
- 疲れていない時間帯
- 親にも余裕がある時
発達障害の可能性を見極めるポイント
チェックすべき発達のサイン
1歳児~2歳児の子の発達障害のサインのチェックリストを参考に、以下の項目を確認してみましょう:
コミュニケーション面:
- □ 名前を呼んでも振り向かない
- □ 指差しをしない
- □ 大人の指差しを理解しない
- □ 言葉の発達が遅い
- □ 模倣をしない
社会性の面:
- □ 人に興味を示さない
- □ 一人遊びを好む
- □ 他の子供との関わりを避ける
- □ 大人との関わりを求めない
行動面:
- □ 同じ行動を繰り返す
- □ 変化を嫌う
- □ 特定のものへの強いこだわり
- □ 感覚過敏または鈍感
専門機関への相談目安
小児科、児童精神科などに相談できます。相談する場所がわからない人は、お住いの自治体や発達障害支援センターなどに問い合わせてみましょう。
相談を検討するタイミング:
- 1歳半健診で指摘された場合
- 2歳になっても名前への反応が全くない場合
- 他の発達面でも気になることが複数ある場合
- 保育園や幼稚園で指摘された場合
乳幼児健診での相談ポイント
健診で伝えるべき情報
乳幼児健診の項目の中に、視線が合うかどうかなど、社会性についての確認項目も入りました。健診では以下の点を具体的に伝えましょう:
具体的な観察記録:
- いつから名前に反応しないか
- どのような状況で反応しないか
- 他の音への反応はどうか
- 言葉の発達状況
- 社会性の発達状況
健診後のフォローアップ
疑わしい場合は、保健機関で経過観察するか、精密検査ができる病院を紹介します。精密検査は、公費負担の対象です。
フォローアップの流れ:
- 保健師による継続的な観察
- 必要に応じて専門医への紹介
- 療育機関での支援開始
- 定期的な発達評価
家庭でできる発達支援
日常生活での工夫
コミュニケーションを豊かにする方法:
- 実況中継式の語りかけ
- 「今からご飯を食べようね」
- 「お風呂に入ろうか」
- 子供の行動を言葉で表現
- 歌やリズム遊び
- 名前を歌に入れて呼びかける
- 手遊び歌を一緒に楽しむ
- リズムに合わせて体を動かす
- 絵本の読み聞かせ
- 子供の名前を絵本の登場人物に置き換える
- 「○○ちゃんならどうする?」と問いかける
- 一緒にページをめくる
感覚統合を促す遊び
体を使った遊び:
- ブランコやシーソー
- トランポリン
- ボール遊び
- かけっこや追いかけっこ
手先を使う遊び:
- 粘土遊び
- お絵かき
- パズル
- ブロック遊び
親のメンタルケアと向き合い方
不安や心配への対処法
親が心がけたいこと:
- 個人差を理解する
- 自分の名前は、遅くても必ず覚える物ですし・・ゆっくりのんびり子供の成長を楽しんでいます
- 他の子と比較しすぎない
- 専門家を頼る
- 一人で抱え込まない
- 早めに相談することの重要性
- 成長を記録する
- 小さな変化も見逃さない
- 動画や写真で記録を残す
夫婦で協力する子育て
編集部体験談: 「私たち夫婦は、子供の名前への反応について心配になった時期がありました。夫は『そのうち反応するようになる』と楽観的でしたが、私は不安でした。でも、二人で子供をよく観察し、成長の記録を付けることで、小さな進歩に気づけるようになりました。大切なのは夫婦で情報を共有し、一緒に子供の成長を見守ることだと感じています。」(編集部・佐藤)
夫婦協力のポイント:
- 観察した内容を共有する
- 役割分担をして練習を継続する
- 心配事は一人で抱え込まない
- 専門機関への相談は夫婦で決める
よくある質問と専門家のアドバイス
Q1:何歳まで様子を見ていいですか?
A: 名前などを含めて、聴覚から「自分」というものを認識するのは1歳ごろからですが、言語理解・発語などの発達がゆっくりな子もいます。2歳になっても全く反応がない場合は、専門機関への相談をお勧めします。
Q2:聴力検査はいつ受けるべきですか?
A: 最近では、新生児聴覚スクリーニングが行われており、生まれてすぐに難聴が発見される場合があります。気になる場合は、小児科医に相談して適切な時期に検査を受けましょう。
Q3:保育園で指摘された場合の対応は?
A: 保育園は集団生活の中で子供の発達を客観的に観察できる場所です。指摘された場合は:
- 具体的な状況を詳しく聞く
- 家庭での様子と比較する
- 必要に応じて専門機関に相談する
まとめ:子供のペースに合わせた成長支援
名前を呼ばれても反応しない子供への対応は、まず発達段階を理解することから始まります。子どもの脳はまだ未熟で発達途中です。できない、ということは、まだ脳のネットワークができていないだけなのです。
重要なポイントの再確認:
- 発達には個人差があることを理解する
- 適切な声かけ方法を継続的に実践する
- 他の発達面も総合的に観察する
- 心配な時は早めに専門機関に相談する
- 夫婦で協力して子供の成長を見守る
ママ・パパが楽しい雰囲気やリラックスした状態で、子どもと遊ぶこと、名前を呼びかけてみることが大事です。焦らずに、子供のペースに合わせて、温かく見守っていくことが何より大切です。
子供の成長は一人ひとり異なります。名前への反応も、その子なりのタイミングで必ず発達していきます。親として大切なのは、子供を信じて、愛情をもって関わり続けることです。気になることがあれば、一人で抱え込まずに、専門家や周りのサポートを積極的に活用していきましょう。
参考情報・相談窓口:
- 地域の保健センター
- 発達障害者支援センター
- 小児科・児童精神科
- 国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センター
この記事の情報は編集部の体験談と専門機関の情報をもとに作成していますが、個別の状況については必ず専門家にご相談ください。