【完全ガイド】幼児のしつけ方法|年齢別・場面別の効果的なアプローチと専門家のアドバイス

【記事のポイント】

  • 幼児期のしつけは「厳しい訓練」ではなく「幸せに生きるための習慣作り」
  • 0〜3歳は自己肯定感を育て、3〜4歳から本格的なしつけを開始
  • イヤイヤ期は成長の証拠。感情を受け止めながら対応することが重要
  • 年齢別・場面別の具体的な方法で、親子ともにストレスの少ないしつけを実現

しつけとは何か?正しい理解から始める

しつけの本当の意味

多くの人は「しつけ」と聞くと厳しい訓練や強制をイメージしがちですが、しつけとは本来「子どもが幸せに生活できるための行動習慣を育てること」です。

「躾」という漢字は「身を美しくする」と書きます。つまり、社会や集団の中でのルールや礼儀作法など、慣習に合った立ち振る舞いができるように教育することなのです。

しつけの目的

しつけの目的は大きく分けて以下の2つです:

1. 社会性の習得

  • 挨拶や交通ルールなど、社会で生きるための基本的なマナー
  • 公共の場でのふるまい方
  • 他者への思いやりや協調性

2. 生活習慣の確立

  • 早寝早起きや食事の作法
  • 自分の健康と安全を守るための習慣
  • 身の回りの整理整頓

しつけ≠叱ること

重要なのは「しつけ」=「叱ること」というのは間違いだということです。一つずつ言葉や援助で教えていくことだけを考えましょう。


年齢別しつけの基本方針

0〜1歳:自己肯定感の土台作り

この時期の特徴

  • 自分の行動をコントロールできない
  • 言葉の理解が限定的
  • スキンシップとコミュニケーションが最重要

対応方法 この時期は、赤ちゃんの自然な動きや行動を制限しない方が、体や脳の発達にとってよいと言われています。危ないものには大人があらかじめ対策をしておくことが必要です。

  • 段差やコンセントなど、危険な環境を事前に整備
  • 理解できなくても言葉をかけ続ける
  • 「ごはん、おいしいね」など子どもの気持ちを言葉にする声かけ

1歳半〜3歳:イヤイヤ期とのつきあい方

この時期の特徴

  • 自我の芽生えと自己主張の開始
  • 感情のコントロールができない
  • 「イヤ!」「自分で!」が口癖に

基本方針 0〜3歳では、まずは自己肯定感をしっかり育てることが大切です。それを土台にすれば、3〜4歳ごろからのしつけが身に付きやすくなります。

3〜4歳:本格的なしつけの開始

この時期の特徴

  • 簡単なルールや約束を守れるようになる
  • コミュニケーション力の発達
  • 社会性の芽生え

対応方法 この年齢の子どもは、「正しいことをしたい」という気持ちが自然と芽生えてきます。「気持ち」と「行動」を分けて捉えて、「気持ち」は否定せずに認めながら、正しい「行動」を教えることです。


イヤイヤ期の正しい対処法

イヤイヤ期が起こる理由

2歳前後の子どもは、前頭前野を用いた感情の制御や判断力が未発達であるため「我慢する」ということができません。つまり、イヤイヤ期は脳の成長において、前頭前野の未発達と自我(欲求)の芽生えが衝突するために起こるものです。

イヤイヤ期の期間と変化

年齢特徴対応のポイント
1歳半〜2歳イヤイヤ期の始まり感情を受け止める
2歳〜2歳半ピーク期短い言葉で伝える
3歳〜4歳徐々に落ち着く理由を説明する

効果的な3つの対応法

1. 感情を受け止める イヤイヤ期の子どもと接するときに最も大切なポイントは、「子どもの気持ちに寄り添うこと」です。子どもの要求を受け入れることの可否にかかわらず、いったん子どもの気持ちを受け止めてあげることで、子どもは安心感を得て心を落ち着かせることができます。

実例

  • 「○○したかったね」
  • 「○○が嫌なの?」
  • 「そうだね。○○だね」

2. 選択肢を与える 子ども服を買う際に「赤い服と青い服、どっちがいい?」と聞いてみましょう。子どもに選ばせることで、物事を自分の意思で決める練習になります。

3. 環境を整える 触られたり舐めしゃぶられて困るものは子どもが絶対に取れないように工夫する、食事の時間に立ち歩いたりテーブルに登ったら、食事の方をかたづけるなど。


場面別しつけの具体的方法

食事のしつけ

基本姿勢

  • 「いただきます」「ごちそうさま」の挨拶
  • 座って食べる習慣
  • スプーンやお箸の正しい持ち方

遊び食べへの対応 遊び食べとは、探索期の子どもの成長過程のひとつです。子どもの遊び食べという行動に実は明確な定義はありません。子どもが成長していくにつれて自然とあらわれてくる行動です。

対処法

  • 集中できる環境作り(テレビは消す、おもちゃは片付ける)
  • 食事時間を決める(2歳で4〜6分程度の集中力)
  • こぼしても叱らず、片付け方を教える

公共の場でのマナー

電車・バスでの過ごし方

  • 「静かにして!」→「ないしょ話しようか」
  • 「走っちゃダメ!」→「ゆっくりぞうさんで歩けるかな?」

お店での行動

  • 商品を触らない
  • 走り回らない
  • 大きな声を出さない

あいさつのしつけ

段階的なアプローチ

  1. 親が見本を見せる
  2. 一緒にあいさつをする
  3. 子ども一人でできるようになる

効果的な声かけ

  • 「○○さんにこんにちはって言ってみよう」
  • 「ありがとうって言えたね、素晴らしい!」

効果的なしつけの5つのポイント

1. 理由を説明する

しつけをするときは、その理由をきちんと納得できるように説明し、「~しようね!」と提案することが大切です。そうすることで、「自分で頑張った」という自主性をお子さまが感じるようになるでしょう。

具体例

  • 「人の多い所で走ると、ママが見えなくなって迷子になるよ」
  • 「人のいる方に物を投げると、ぶつかってケガさせちゃうよ」

2. 肯定的な表現を使う

大切なのは「やってはいけないこと」を言うのではなく、「やってほしいこと」を伝えること。ポイントは「具体的にやってほしい行動内容」を伝えることです。

NG表現OK表現
「走らないで!」「歩いてね」
「うるさい!」「小さな声で話そう」
「散らかさないで!」「おもちゃをお家に戻そう」

3. プロセスを褒める

重要なのは、「上手にできた」という結果だけを褒めることではなく、「よくやろうとしたね」「がんばったね」などと、プロセス(気持ち)を褒めてあげることです。

褒め方の例

  • 「自分で靴を履こうとしたんだね」
  • 「お片付けを頑張ってるね」
  • 「お友達に優しくできたね」

4. 一貫性を保つ

しつけの基準がブレると子どもが混乱します。家族間でルールを統一し、一貫した対応を心がけましょう。

5. 親が手本を示す

お子さまは保護者や周りの大人たちの行動をよく観察しています。大人自らが礼儀作法の見本となるような行動、振る舞いを心がけるのも、しつけにおける大切なポイントになるでしょう。


よくある間違いとNG行動

してはいけないこと

1. 感情的に叱る 「おばけが出るよ」という脅しの言葉や「ダメ」という否定の言葉を使うことは避けましょう。また、「お菓子をあげるから」といった交換条件を出すことや「○○しなさい」と命令することも禁止です。

2. 人格を否定する

  • 「悪い子ね」「ダメな子」などの表現
  • 「もう知らない」「置いていくよ」などの脅し

3. 他の子と比較する

  • 「○○ちゃんはできるのに」
  • 「お兄ちゃんはもっと上手だった」

よくある勘違い

勘違い正しい考え方
厳しくしないとダメになる愛情を持って伝えることが大切
早くできるようにならないと子どものペースに合わせる
完璧にしつけないと徐々に身につくもの

専門家が教える実践テクニック

保育士が実践する方法

私は「しつけ」は厳しくするものだと思っていたので、怒ってばかりいました。ところが、幼稚園の先生たちがほとんど怒らないことに気がつきました。通園着のボタンを掛け違えている息子に「そのボタンのお友達はどこかな?お友達を探して」。そう言われた彼はニコニコしながらボタンを留め直しました。

効果的な声かけテクニック

1. 擬人化する

  • 「お箸さんが泣いてるよ」
  • 「おもちゃがお家に帰りたがってる」

2. ゲーム感覚にする

  • 「お片付け競争しよう」
  • 「魔法の言葉(ありがとう)を言ってみて」

3. 選択肢を与える

  • 「歯磨きと着替え、どっちが先がいい?」
  • 「この靴とあの靴、どっちを履く?」

年齢別の具体的なアプローチ

2歳児への対応 イヤイヤ期の子どもを叱る際は、感情を受け止めてあげることが重要です。「自分でお靴が履きたかったんだよね」「自分で食べたかったんだね。うまくできなくて悔しいね」と、子どもの感情を受け止め、自主性を尊重してあげましょう。

3歳児への対応 3歳を過ぎた頃から、言葉の説明で物事がイメージできるようになってきます。叱る理由を伝えることで、危険なことやしてはいけないことが分かってくるからです。

4歳児への対応 4歳頃からは、叱る際に人の気持ちも伝えるようにしましょう。


まとめ

しつけの要点

幼児期のしつけは、子どもが将来幸せに生きていくための土台作りです。以下のポイントを押さえて、親子ともにストレスの少ない方法で進めていきましょう。

重要なポイント

  1. しつけ=幸せに生きる力を育てること
    厳しい訓練ではなく、社会で生きるための基本的な習慣を身につけることが目的
  2. 年齢に応じたアプローチ
    0〜3歳は自己肯定感の育成、3〜4歳から本格的なしつけを開始
  3. イヤイヤ期は成長の証拠
    感情的に叱らず、子どもの気持ちを受け止めながら対応
  4. 一貫性と愛情
    家族間でルールを統一し、愛情を持って継続的に関わる
  5. 親も学び続ける
    完璧を求めず、子どもと一緒に成長していく姿勢が大切

長期的な視点で

イヤイヤ期は子どもが成長するうえで必ず通る道。乗り越えた時、必ず精神的に大きくたくましくなります。長い目で見たら、子どもにとっても大人にとっても人生のとても短い期間です。

しつけは一朝一夕にできるものではありません。子どもの成長に合わせて、根気よく愛情を持って続けることで、必ず実を結びます。今日からできることから始めて、親子で一緒に成長していきましょう。

参考文献

  • 文部科学省「幼児教育に関する大規模縦断調査」
  • ベネッセ教育総合研究所「幼児の生活アンケート」
  • 日本保育学会「乳幼児の発達と保育」