はじめに
「うちの子、なかなか一人で靴が履けなくて…」「毎朝の準備で靴を履かせるのに時間がかかって大変」そんなお悩みを抱えているパパ・ママは多いのではないでしょうか。
個人差はありますが、1歳半~2歳半頃には自分で靴を履く事が出来るようになります。しかし、3歳になってもなかなか履けないお子様も見受けられます。実は、靴を履くという動作は思っている以上に複雑で、たくさんのステップが必要な高度な動作なのです。
本記事では、子供が楽しく靴を履けるようになる遊びを取り入れた練習方法と、自分で履きやすい靴の選び方について、専門的な知識と実際の体験談を交えながら詳しく解説していきます。
1. なぜ子供にとって靴を履くのは難しいのか
1-1. 靴を履くために必要なステップ
靴を履くステップってどこからスタートすると思いますか?ずばり、「見る」ことからスタートします。マジックテープの靴を例に見てみましょう:
- 視覚的認識:いろんな靴の中から自分の靴を見つける
- 手の動作:靴に手を伸ばして引き寄せる
- 指先の操作:マジックテープをはがして口を大きく開く
- 足の動作:靴を見ながら足を入れる
- 協調運動:かかと部分を踏まないように後ろを引っ張る
- 最終調整:マジックテープを引っ張ってしっかりとめる
1-2. 幼児期の発達特性と靴履きの関係
発達障害・グレーゾーンの幼児は脳のいろんな苦手さから、すんなりと靴を履くことができません。例えば:
- 注意力の問題:靴を見ずに他のものに気を取られてしまう
- 集中力の持続:履くことを途中で諦めてしまう
- 手指の不器用さ:テープをうまく引っ張ることができない
- ボディイメージの未発達:自分の身体の動きや大きさに対する感覚があいまい
編集部体験談 当編集部スタッフの3歳の息子も、靴を履く際に「足を入れるだけで疲れた」と言って途中で諦めることが多くありました。しかし、後述する遊びを取り入れた練習方法を試したところ、2週間ほどで一人で履けるようになりました。子供のペースに合わせることの大切さを実感した経験でした。
2. 遊びを取り入れた楽しい練習方法
2-1. 段階別練習プログラム
【ステップ1】基礎運動能力を育てる遊び
輪っか通し遊び 身近にある輪ゴムや髪ゴム、シュシュを使って、履き口を広げて足を通す遊びを行うのも良いでしょう。
道具 | 遊び方 | 期待される効果 |
---|---|---|
大きめのヘアゴム | 床に置いたゴムに足を通す | 足を狙った場所に入れる練習 |
フラフープ | 足で踏んで持ち上げる | バランス感覚と足の協調性 |
新聞紙 | 広げて足で蹴り破る | 足の力加減を学ぶ |
バランス遊び
- 片足立ちゲーム(何秒立っていられるか競争)
- けんけんぱ遊び
- 椅子に座ったまま足上げ競争
【ステップ2】靴に慣れる遊び
靴探しゲーム まずは、「○○くんの靴どこかな~?」とお母さんの明るい声かけで、自分の靴を見つけさせましょう。
- 宝探し方式:家の中に靴を隠して探す
- 神経衰弱方式:左右の靴を別々の場所に置いて揃える
- お店屋さんごっこ:靴屋さんになりきって「いらっしゃいませ」
音楽に合わせて練習 マジックテープをはがす音を「ペリペリ」、履く動作を「スポッ」など、擬音語を使って歌いながら練習すると楽しく取り組めます。
2-2. 年齢別おすすめ練習遊び
1歳半~2歳:感覚遊び中心
触る・掴む遊び
- 靴の感触を楽しむ(「ふわふわだね」「ざらざらだね」)
- 靴をトンネルにして人形を通す
- 靴の中にボールを入れる・出す遊び
2歳~3歳:模倣遊び中心
お人形さんと一緒に練習 大きめのお人形に靴を履かせてあげる遊びから始めると、「お人形さんにできたから自分もできる」という自信につながります。
競争ゲーム
- ママと一緒に「よーいドン」で靴を履く競争
- タイマーを使って「30秒で履けるかな?」チャレンジ
3歳以上:ゲーム性のある練習
ポイント制度 靴が履けたらシールを貼る、10個貯まったら好きなものを買ってもらえるなど、達成感を味わえる仕組みを作ります。
2-3. 楽しい環境づくりのポイント
靴を履く練習は、楽しいお出かけとセットで取り組むことで子どものモチベーションアップに繋がります。
成功の秘訣
- 時間に余裕を持つ:靴を履く練習は5分くらいかかることもあります。余裕をもってできるように、早めにお出かけの準備を開始しましょう。
- 小さな成功を認める:完璧でなくても「頑張ったね」「ここまでできたね」と過程を評価
- 失敗を責めない:「大丈夫、また一緒にやってみよう」と前向きな声かけ
3. 自分で履きやすい靴の選び方
3-1. 履きやすさを重視した機能的な特徴
必須条件
自分で履きやすい運動靴の特徴はこちら。
特徴 | 理由 | 選び方のポイント |
---|---|---|
履き口がガバっと開く | 足を入れやすい | ベロとベルトが一体型のものがおすすめ |
踵にプルタブがついている | かかとを引っ張りやすい | 指がかかりやすい大きさかチェック |
ベロが迷子にならない | 毎回同じ状態で履ける | 片側が固定されているタイプ |
扱いやすいマジックテープ一本 | 調整が簡単 | 太めで引っ張りやすいもの |
おすすめブランド・シリーズ
1. asics スクスク マイセルベビー 子どもたちの自己肯定感を高め、親の余裕も生み出してくれる、子どもが自分で脱ぎ履きしやすい靴。細身~普通の足幅のお子様におすすめです。
2. ミズノ プレモア インファント 甲高・幅広設計で、スポーツシューズのノウハウをぎゅっとつめこんだソール設計です。
3. IFME patto メッシュベビースニーカー ベロ・ベルト一体型の先駆けはIFMEで、お手頃価格も魅力的です。
3-2. 足の健康を考慮したサイズ選び
正しい測定方法
「足長」「足幅」「足囲」をちゃんと測り、足のサイズにあった正しい靴を選んでください。
測定のポイント
- 立った状態で測る:体重がかかった状態での足の形を知るため
- 両足を測る:左右で大きさが違うことがあるため、大きい方に合わせる
- 午後に測る:朝より午後の方が足がむくんで大きくなるため
適切なサイズの目安
かかとを合わせて履いた時、足の指に動かせるくらいの、5mm~10mmのゆとりがあることが大切です。
年齢別サイズ更新頻度
- 3歳までは3ヶ月ごと、3歳以降は半年ごとの靴の買い替えが目安
- 3歳半までは、半年で約10mm成長
- 以降は5mm程度の成長
3-3. 素材と構造のチェックポイント
安全で健康的な足の発達のために
間違った靴を選ぶと、足はもちろん、ヒザや腰の病気につながったり、内臓の働きに影響を与えることもあります。
チェック項目
- つま先部分:指が自由に動かせる幅があるか
- かかと部分:体重を支えるために、かかと芯(カウンター)がしっかりとしたもの
- 靴底:安定感があり、靴底指の付け根部分が柔軟に曲がるもの
- 通気性:子供は大人より汗をかくので、通気性のよいメッシュ素材
4. スモールステップでの教え方
4-1. 段階的指導法
ステップをひとつずつマスターしていくことが成功の鍵です。
第1段階:靴を見つける・触る
- 目標:自分の靴を認識し、手に取る
- 期間:1週間程度
- 褒めポイント:「見つけられたね!」「持てたね!」
第2段階:マジックテープを外す
- 目標:「ペリペリ」音を楽しみながら外す
- 期間:1週間程度
- 褒めポイント:「ペリペリって音がしたね!」
第3段階:足を入れる
- 目標:つま先まで足を入れる
- 期間:2週間程度
- 褒めポイント:「足が入ったね!」
第4段階:かかとを入れる
- 目標:プルタブを使ってかかとを入れる
- 期間:2週間程度
- 褒めポイント:「かかとが入ったね!」
第5段階:マジックテープを留める
- 目標:しっかりと固定する
- 期間:1週間程度
- 褒めポイント:「最後までできたね!」
4-2. つまずきやすいポイントと対策
よくある困りごとと解決方法
1. かかとが入らない かかとのループをチェック。プルタブのある靴でも、さらに指が引っ掛けやすいループを付けてあげることで、踵がぐっと入れやすくなります。
対策
- 紐やゴムタグを追加で付ける
- 椅子に座って練習する
- 大人が靴を固定してサポート
2. 左右を間違える 左右反対に履いてしまう事も本当に多いです。
対策
- 靴の内側に目印シールを貼る
- 中敷きに絵合わせイラストを付ける
- 「右に星、左にハート」など覚えやすい工夫
3. マジックテープが上手く留められない 対策
- テープにループやタグを付けて掴みやすくする
- 「引っ張ってペタン」の動作を歌にして覚える
- 最初は緩くても良しとして徐々に上達を目指す
4-3. 褒め方とモチベーション維持
効果的な褒め方
ひとつできたら必ず褒める。「○○くんの靴どこかな~?」とお母さんの明るい声かけで、自分の靴を見つけさせましょう。発達障害・グレーゾーンの幼児のお子さんがノリノリで「あった!」と言ったら「見つけられたね!」と褒めます。
褒めるタイミング
- 過程を褒める:「頑張っているね」「集中しているね」
- 具体的に褒める:「ペリペリできたね」「足が入ったね」
- 努力を褒める:「諦めないで頑張ったね」
継続のための工夫
視覚的な達成感
- シール帳を作成して成功したらシールを貼る
- カレンダーに「できた」マークを付ける
- 写真や動画で成長の記録を残す
5. 年齢別・発達段階別アプローチ
5-1. 1歳半~2歳:土台作りの時期
発達の特徴
- 歩行が安定してくる
- 手指の細かい動作が発達
- 模倣が上手になる
おすすめアプローチ
感覚遊び中心
- 靴に慣れ親しむ遊び(触る、音を出す)
- 大人の真似っこ遊び
- 「靴を履く=お出かけできる」の理解
練習のポイント まずは、履きやすい「長靴」で練習することがおススメです。長靴は履き口が広く、足を入れやすいためです。
5-2. 2歳~3歳:自立心が芽生える時期
発達の特徴
- 「自分で」やりたがる
- 集中力が少しずつ伸びる
- 言葉での指示理解が進む
おすすめアプローチ
段階的指導 今まで大人が履かせる方が正直ラクです。しかし「まだ小さいし…」「時間が無いし…」といつも履かせてしまうのは要注意。
練習のポイント
- 椅子に座った状態から始める
- 一つの動作ができたら次へ進む
- 失敗しても「大丈夫」と声をかける
5-3. 3歳以上:完成を目指す時期
発達の特徴
- 複雑な動作の組み合わせが可能
- 達成感を求める
- 競争心が芽生える
おすすめアプローチ
ゲーム性を取り入れた練習
- タイム計測チャレンジ
- お友達や兄弟との競争
- 完璧を目指した仕上げ練習
自信を育てる工夫 いまではひとりで履けるようになりました。できるペースは人それぞれ、遅いからと焦らず、親子で楽しく取り組んであげてくださいね。
6. 困った時の対処法・Q&A
6-1. よくある質問と回答
Q1: 3歳半になってもまだ一人で履けません。大丈夫でしょうか?
A: 個人差があるので焦る必要はありません。自分で靴を履けるようになるのは、おおむね3歳頃といわれています。しかし、子どもの発達には個人差があるため、2歳を過ぎたら上手に履けるようになる子もいれば、4歳を過ぎても自分で履くのが難しい子もいます。手先の器用さや集中力の発達に合わせて、ゆっくりと練習を続けましょう。
Q2: 毎朝時間がなくて、つい履かせてしまいます。
A: 朝は時間に余裕を持つことが大切です。前日の夜に靴を準備しておく、朝のルーティンを見直すなど、環境を整えることから始めてみてください。時間がない時は履かせても構いませんが、時間のある休日などに練習の機会を作りましょう。
Q3: 嫌がって全く練習をしたがりません。
A: 無理強いは逆効果です。まずは靴に興味を持ってもらうことから始めましょう。好きなキャラクターの靴を選ぶ、靴で遊ぶ時間を作る、お出かけ先を魅力的にするなど、モチベーションを上げる工夫をしてみてください。
6-2. 特別な配慮が必要な場合
発達に課題があるお子様への配慮
発達障害のある子どもや、手先が不器用な子どもにとって、新しい動作を覚えることは大きな負担になっていたり、失敗体験の積み重ねから「自分ではできない」という心理状態になっているのかもしれません。
サポートのポイント
- スモールステップの細分化:通常より小さな段階に分ける
- 視覚的な手がかり:絵カードや写真を使った手順表
- 感覚過敏への配慮:素材や触り心地への配慮
- 成功体験の積み重ね:できることから始めて自信をつける
運動発達に遅れがある場合
アプローチ方法
- 理学療法士や作業療法士などの専門家への相談
- バランス訓練の充実
- 足の筋力を育てる遊びの取り入れ
7. 園生活での靴の重要性
7-1. 集団生活でのメリット
靴が履けない劣等感から園生活が億劫になる場合もあります。逆に、自分で靴が履けることで得られるメリットは多くあります。
園生活でのメリット
- 自信の向上:「自分でできる」という自己肯定感
- 時間の有効活用:着替えの時間が短縮され、遊ぶ時間が増える
- 先生への負担軽減:他の子のサポートも必要なため
- 友達との関係性:できることが増えて友達と対等な関係を築ける
7-2. 園選び・入園準備のポイント
確認すべき項目
- 靴の脱ぎ履きの頻度(外遊び、体操の時間など)
- 先生のサポート体制
- 靴箱の高さや構造
- 上履きの使用有無
入園前の準備
- 3か月前から練習開始:余裕を持ったスケジュール
- 園の靴箱を想定した練習:立ったまま履く練習
- 上履きの練習:園で使用する場合は別途練習
8. 専門家からのアドバイス
8-1. 足の健康の観点から
つちふまずの形成には、3~6歳の時期に、屈曲性の良い靴を履いて歩くことが大切です。正しい靴選びと履き方は、将来の足の健康に大きく影響します。
足の発達における重要なポイント
- 土踏まずの形成:3歳頃から始まり、6歳頃まで続く
- 正しい歩行の習得:適切な靴でしっかりと歩くことが大切
- 足指の発達:靴の中で自由に動かせる環境が必要
8-2. 心理発達の観点から
自立心の育成 靴を履くという日常的な動作ができるようになることで、子供の自立心や自己効力感が育まれます。
達成感と自信 発達障害・グレーゾーンの幼児が、靴が履けるようになるためには、楽しい!褒めてもらえる!という感情とセットであることが大切です。
9. まとめ:楽しく継続するための心得
9-1. 成功のための5つのポイント
- 子供のペースを尊重する 遅いと思っても、とにかく待つ!です。遅いけれども頑張っているこの時間に発達障害・グレーゾーンの幼児の脳はたくさんのことを学んでいます。
- 適切な靴を選ぶ 履きやすさと足の健康の両方を考慮した靴選びが重要です。
- 遊びの要素を取り入れる 楽しい遊びを通して自然に技術を身につけることができます。
- 小さな成功を積み重ねる 完璧を求めず、できたことを具体的に褒めることが大切です。
- 環境を整える 時間的余裕、物理的環境、心理的環境すべてを整えることが成功につながります。
9-2. 長期的な視点での効果
即座に得られる効果
- 朝の準備時間の短縮
- 親子のストレス軽減
- 子供の自信向上
将来的な効果
- 自立心の育成
- 問題解決能力の向上
- 足の健康維持
- 他の身辺自立スキルへの応用
9-3. 最後に
子供が靴を履けるようになる過程は、単なる技術の習得以上の意味があります。忍耐力、集中力、そして「自分でできる」という自信を育む大切な機会なのです。
大人からすると「靴ぐらいで?」「そのうち履けるでしょ?」と思われるかもしれませんが、靴が原因で園に行くことが億劫になる…という事も往々にしてあります。
每日の小さな積み重ねが、お子様の大きな成長につながります。遊びを通して楽しく、子供のペースに合わせて、継続的にサポートしていくことが最も大切です。
お子様が一人で靴を履けるようになった時の嬉しそうな顔を想像しながら、親子で楽しい練習時間を過ごしてくださいね。きっと、その努力は素晴らしい成果となって現れることでしょう。
参考文献・出典
- パステル総研「発達障害の幼児が靴を履かない!3歳の子が靴を履けるようになるにはどうすればいいでしょうか?」
- ソコヂカラドットコム「【2歳3歳】靴が履けない子供へのサポート方法とおすすめ運動靴6選」
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