「うちの子の走り方がなんか変…」そんな不安を抱える保護者の皆様へ
運動会や公園で他の子と一緒に走る我が子を見て、「なんとなく走り方がぎこちない」「フォームが気になる」と感じたことはありませんか?
多くの保護者が子供の走り方について悩みを抱えています。しかし、適切な理解と楽しい改善遊びを通じて、お子様の走る能力は確実に向上させることができます。
この記事では、幼児期から小学校低学年の子供の走り方の特徴を理解し、家庭で楽しく実践できる改善方法をご紹介します。専門的な知識に基づいた情報と、実際に効果のある遊びを通して、親子で一緒に取り組める内容をお届けします。
子供の走り方が「変」に見える理由を理解しよう
発達段階による自然な特徴
子供の走り方が大人から見て「変」に感じられるのは、実は発達過程における自然な現象です。幼児期から小学校低学年にかけて、以下のような特徴が見られることは決して珍しいことではありません。
年齢別の走り方の特徴
年齢 | 典型的な走り方の特徴 | 発達の背景 |
---|---|---|
2-3歳 | ガニ股で走る、バランスが不安定 | 筋力発達途中、重心が高い |
4-5歳 | 膝が上がらない、すり足気味 | 股関節の柔軟性、筋力不足 |
6-7歳 | 腕の振りが横になる、前傾姿勢 | 体幹筋力の発達途中 |
発達上、2〜3歳頃までは筋力の問題で大半の子どもがガニ股で、現代の子ども達は意識的にひざを上げる機会が少なくなりました。
現代の子供特有の課題
現代社会の変化が子供の運動発達に影響を与えています。
環境要因
- 舗装された道路でつまずく機会の減少
- エレベーターやエスカレーターの普及
- 外遊びの時間減少
- デジタル機器の使用時間増加
スポーツ庁の調査によると、4割を超える幼児の外遊びの時間が1日1時間(60分)未満となっています。この傾向は、基本的な運動機能の発達に影響を与える可能性があります。
よくある「気になる走り方」5つのパターンと原因
パターン1:膝が上がらない走り方
特徴
- 足を高く上げずに走る
- ちょこちょこと小刻みな走り方
- スピードが出にくい
原因と背景 股関節が硬くなっている子どもは足を上げることが苦手であることが多く、足を上げる機会が少ないことや筋力が未発達であることが挙げられます。
パターン2:ガニ股での走り方
特徴
- 足が外側に開いて走る
- 左右にぶれながら進む
- バランスが取りにくそう
原因と背景 幼児期のガニ股は自然な発達過程の一部です。ただし、普段の座り方(お姉さん座りなど)が影響する場合があります。
パターン3:すり足での走り方
特徴
- かかとを引きずるような走り方
- 足音が大きい
- つまずきやすい
原因と背景 足を上げる筋力の未発達や、日常生活で足を上げる動作の経験不足が主な原因です。
パターン4:極端な前傾姿勢
特徴
- 体が前に倒れそうになりながら走る
- アヒルのような姿勢
- バランスを崩しやすい
原因と背景 「速く走りたい」という気持ちが強すぎて、体が前のめりになりすぎる場合があります。
パターン5:腕を横に振る走り方
特徴
- 腕を左右に振りながら走る
- 上半身がぶれる
- 推進力が生まれにくい
原因と背景 子どもは背中に比べ体の前面の筋肉が発達しているため、前後に腕を降る動きよりも横に腕を振りがちです。
【重要】心配しすぎる必要がない理由
神経系の発達は6歳頃まで急速に進む
幼児期は脳や神経系が盛んに発達する時期で、7~8歳にその発達がピークに達すると言われています。この時期に様々な動きを経験することで、運動能力は自然に向上していきます。
個人差は当然のもの
子供には当然成長差があり、同じ学年の場合、生まれが4月の子と3月の子とではほぼ1年近くの成長の差があります。一学年で最大3年ほどの成長差があるとも言われているため、現時点での走り方の違いを過度に心配する必要はありません。
編集部体験談:「変」だった走り方が改善された実例
編集部スタッフAさんの体験談 「5歳の息子の走り方が気になって相談した時、専門家の先生から『今は基礎作りの時期』と言われました。毎日の遊びに少しずつ運動要素を取り入れただけで、半年後には見違えるような走り方に変わりました。何より、息子自身が走ることを楽しむようになったのが一番の収穫でした。」
楽しく改善!年齢別おすすめ遊び集
2-3歳:基礎づくり期の遊び
この時期は「楽しく体を動かす」ことが最優先です。
🎈 風船遊び
- 風船を手で叩いて落とさないようにする
- 膝をついて風船を蹴る
- 効果: バランス感覚、反射神経の向上
🐸 動物まねっこ遊び
- カエル跳び、うさぎ跳び、クマ歩き
- ゾウさん歩き(手を下に垂らして大きく歩く)
- 効果: 多様な動きの習得、筋力向上
🎵 音楽に合わせて体操
- 好きな音楽に合わせて自由に踊る
- 「グー・チョキ・パー」を全身で表現
- 効果: リズム感、協調性の向上
4-5歳:動きの多様化期の遊び
この時期は様々な動きを組み合わせた遊びを取り入れます。
🏃♂️ 鬼ごっこのバリエーション
遊び名 | ルール | 改善効果 |
---|---|---|
色鬼 | 指定された色を触って安全地帯へ | 瞬発力、判断力 |
しっぽ取り | 腰につけたしっぽを取り合う | 敏捷性、バランス |
だるまさんが転んだ+ | 「だるまさんがジャンプした」等の指示 | 静止バランス、反応力 |
全力で鬼ごっこをすれば、「絶対つかまりたくない!」という思いから小回りがきいたり、動きも俊敏になったりします。
🪢 縄跳び遊び
- 縄を地面に置いて線上歩き
- ヘビのように動かす縄を踏まないようにジャンプ
- 大縄跳びの下くぐり
- 効果: 体幹強化、リズム感、判断力向上
⚽ ボール遊び
- ボールを蹴りながら歩く
- 投げたボールをキャッチ
- ボール転がし競争
- 効果: 手足の協調性、空間認識能力
6-7歳:技術向上期の遊び
この時期は正しいフォームを意識した遊びを導入します。
🏃♀️ かけっこ遊びのバリエーション
スキップ競争
- 正しいスキップで決められた距離を進む
- ポイント: 膝を高く上げる動きの練習
後ろ向き走り
- 安全な場所で後ろ向きに走る
- ポイント: バランス感覚と体幹の強化
ケンケン競争
- 片足で連続ジャンプ
- ポイント: 片足の筋力とバランス向上
🎯 的当て遊び
- ペットボトルボーリング
- 新聞紙ボール投げ
- 効果: 体の連動性、狙いを定める能力
🤸♂️ マット遊び
- 前転、後転の練習
- 側転の導入
- 効果: 空間認識、体の使い方の向上
家庭でできる「正しい走り方」の教え方
段階的アプローチ
ステップ1: 正しい姿勢を覚える
壁際に立ち、顎を引きながら「頭・肩甲骨・腰・かかと」の4点を壁につけ、その姿勢を保ったまま前へ数歩進む方法で、正しい姿勢を体に覚えさせます。
ステップ2: 腕の振り方を練習
- 力まないように手を軽く握る
- 肩の力を抜いて構える
- 脇を締めて腕を前後に振る
ポイント: 前の腕は自分の指が見えるくらいの位置まで振り、後ろの腕は真っ直ぐ伸ばすのではなく肘が90度に曲がるくらいまで振る
ステップ3: 足の動きを改善
- 太ももを上に持ち上げる動作の練習
- 短い接地時間を意識
- 足裏全体で地面を捉える感覚を養う
効果的な声かけのポイント
❌ 避けるべき声かけ
- 「一生懸命走りなさい」
- 「なんでできないの?」
- 「もっと速く!」
⭕ 効果的な声かけ
- 「力をゆらゆら抜いて走ってみよう」
- 「上手になったね!」
- 「楽しく走ろう!」
「力がゆらゆら抜けているから一瞬のスピードがでて、力が抜けているから速く走れるんだよ!」というような例え話で、力をぬく、つまり脱力をすることを意識させてあげてください。
専門家が教える!運動能力向上のコツ
幼児期に重要な3つの動きの要素
スポーツ庁の専門家によると、幼児期に特に意識したいのは「バランスを取る動き」「体を移動させる動き」「ものを操作する動き」の3つです。
バランスを取る動き
- 片足立ち、平均台歩き
- ケンケン、スキップ
- だるまさんが転んだ
体を移動させる動き
- 走る、跳ぶ、滑る
- 鬼ごっこ、かけっこ
- 階段の上り下り
ものを操作する動き
- 投げる、蹴る、打つ
- ボール遊び、縄跳び
- 楽器を使った遊び
継続のための工夫
遊びの記録をつける 子供と一緒に「今日できた遊び」を記録することで、成長を実感できます。
目標設定は小さく 「今日は10回ケンケンできるかな?」など、達成しやすい目標から始めましょう。
家族みんなで参加 大人が運動している姿をたくさん見せることでイメージがしやすくなり、今後のお子様の運動能力アップにもつながります。
気になる症状と専門機関への相談タイミング
注意深く観察したいポイント
以下の特徴が複数見られ、長期間続く場合は専門家への相談を検討しましょう。
身体的な特徴
- つま先立ちでの歩行が続く
- 極端にバランスが取れない
- 年齢に比べて著しく運動発達が遅い
行動的な特徴
- 横目で物を見ることが多い
- 常に走り回って止まれない
- 指示が通りにくい
相談先の選び方
最初の相談窓口
- かかりつけの小児科医
- 市町村の保健センター
- 通っている幼稚園・保育園の先生
専門機関
- 小児神経科
- 小児整形外科
- 発達支援センター
注意深く観察した上で自閉症の可能性があると思った場合は、ネットなどの情報を鵜呑みにせず地域の専門機関へ相談しましょう。
毎日の生活に運動遊びを取り入れるスケジュール
平日(保育園・幼稚園がある日)
朝(15分)
- 起床時のストレッチ体操
- 歯磨きしながら片足立ち
- 朝食後のラジオ体操
帰宅後(30分)
- 公園での自由遊び
- 鬼ごっこやかけっこ
- 遊具を使った遊び
夕方・夜(15分)
- お風呂上がりのストレッチ
- 寝る前のゆったり体操
休日(60分以上)
午前中(30-45分)
- 公園での本格的な運動遊び
- 家族みんなでサイクリング
- ハイキングや自然散策
午後(15-30分)
- 室内での工作と運動の組み合わせ
- 音楽に合わせたダンス
- 家事のお手伝い(体を使う作業)
雨の日の室内運動(20-30分)
リビングでできる運動
- 新聞紙を使った遊び(破く、投げる、踏む)
- クッションを使った障害物コース
- 音楽に合わせた体操
廊下を使った運動
- ケンケン競争
- 動物歩きリレー
- ボール転がしゲーム
運動遊びで育む心の成長
自己肯定感の向上
運動会や陸上競技大会などで速く走れた経験は、お子さんにとって小さな成功体験になります。「うまく走れた!」「速く走れた!」という成功体験が、生きていく上での自信に繋がります。
社会性の発達
運動遊びを通じて以下の能力が自然に育まれます:
- 協調性: チームで遊ぶことでルールを守る力
- コミュニケーション能力: 仲間との関わりの中で身につく
- 自制心: 順番を待つ、負けを受け入れる経験
- 創造性: 新しい遊び方を考える力
友達と一緒に運動する中で、ルールを守ったり、自分の欲求を我慢して相手に譲ったりといったコミュニケーションをとることによって、協調しながら過ごす社会性が培われていきます。
編集部体験談:心の成長を実感したエピソード
編集部スタッフBさんの体験談 「4歳の娘は内気で新しいことに挑戦するのが苦手でした。でも、家族で楽しく運動遊びを続けているうちに、『今日は新しい遊びをやってみたい!』と自分から言うようになりました。運動を通じて自信がついたようで、保育園でも積極的に遊びに参加するようになったと先生から褒められました。」
長期的な視点:生涯の運動習慣につなげるために
6歳までが重要な理由
スポーツ庁の調査によると、6歳までにさまざまな遊びや運動をすることは、神経の発達にもよい影響をもたらします。幼児期を過ぎてからでは克服しにくい「不器用」や「苦手」といった要素も、幼児期に感覚を発達させることで軽減すると言われています。
運動習慣の継続効果
小学校以降への影響 入学前の外遊びの実施頻度が高いほど現在の運動・スポーツ実施状況が高いことが分かります。入学前の運動頻度が「週6日以上」の子供と「週に1日以下」の子供では、入学後の運動頻度が「ほとんど毎日」になる率が男子で30%近く、女子ではなんと50%近い差が出ました。
成人期への影響 高校生は幼少期の運動経験、成人は若い頃の運動経験が、現在の運動習慣の土台になっています。子どものころ、特に小学校入学前の幼児期に運動の経験があまりない人は、大人になっても土台がないのでなかなか運動できないのです。
親としての心構え
結果よりもプロセスを大切に
- 他の子と比較しない
- 小さな成長を見逃さない
- 楽しむ気持ちを最優先にする
継続可能な環境作り
- 無理のないスケジュール設定
- 天候に左右されない室内遊びの準備
- 家族全員が参加しやすい雰囲気作り
まとめ:子供の可能性を信じて楽しく取り組もう
子供の走り方が「変」に見えることは、発達過程における自然な現象です。重要なのは、その特徴を理解し、適切なサポートを通じて子供の可能性を伸ばしていくことです。
この記事のポイント
- 発達段階を理解する: 年齢に応じた走り方の特徴は自然なもの
- 楽しい遊びを取り入れる: 強制ではなく、遊びを通じた自然な改善
- 家族みんなで参加する: 親の姿勢が子供のやる気に直結
- 長期的な視点を持つ: 幼児期の運動経験は生涯にわたって影響
- 専門家との連携: 気になることがあれば早めの相談を
幼児にとっての運動は、楽しく身体を動かす”遊び”を中心に行うのがポイントで、それらの身体活動を「毎日合計60分以上」行うことも意識するといいでしょう。
毎日の小さな積み重ねが、お子様の運動能力と心の成長につながります。完璧を求めず、親子で楽しみながら取り組むことで、走ることの楽しさを感じられる子供に育てていきましょう。
子供の「変」な走り方は、実は成長の証です。その個性を大切にしながら、適切なサポートを続けることで、きっと素晴らしい成長を見せてくれるはずです。
参考資料
- スポーツ庁「幼児期運動指針」
- スポーツ庁「平成28年度体力・運動能力調査結果の分析」
- 順天堂大学スポーツ健康科学部研究報告