幼児教育において、親の「声かけ」は子どもの知育効果を大きく左右する重要な要素です。毎日何気なく子どもにかけている言葉が、実は子どもの脳の発達や学習能力、自己肯定感の形成に深く関わっているのをご存知でしょうか。
【編集部より】私たちも実践している声かけの重要性
LifreLl知育メディア編集部では、実際に幼児を持つスタッフが多数在籍しており、日々の子育てで声かけの効果を実感しています。特に2歳の子を持つ編集メンバーは、「肯定的な声かけを意識し始めてから、子どもの自発的な行動が明らかに増えた」と報告しています。
親の声かけが知育に与える影響とは
脳科学が証明する声かけの効果
発達の芽生え期にいる0・1・2歳児について、この期間に受けた言葉の質や量が、「将来まで左右するらしい」という研究もあるほど、親の声かけは子どもの発達に大きな影響を与えます。
アメリカの研究では、3歳までに保護者が子どもに話す言語の数が、多い家庭とそうでない家庭で3000万語の差があるという調査結果が報告されています。この差が後の学力格差につながることも明らかになっており、声かけの量と質の重要性が科学的に証明されています。
日本の幼児教育における声かけの位置づけ
厚生労働省の保育所保育指針では、**「応答的なかかわり」**の重要性が強調されています。これは以下の3つのポイントからなります:
- 子どもの関心のあることに対して
- 子どもの横に並んで(三項関係)
- 子どもがこちらに注意を向けたときに対話する
知育効果を高める声かけの5つの基本原則
1. 目を見て笑顔で伝える(全年齢共通)
目を見て言葉かけをすると、子どもは自分への言葉であることを強く認識します。「よくできたね~」と言いながら洗い物をするのではなく、手を止めて子どもの目を見て伝えることで、言葉の効果は格段に高まります。
実践例:
- ❌ 「すごいね」(手を止めずに)
- ⭕ 「○○ちゃん、すごく上手にできたね!」(目を見て笑顔で)
2. ポジティブで具体的な表現を使う
「~をしてはだめでしょ」と注意されても、一体、何を求められているのか想像できません。そういう否定の表現より、「~しようね」と、すべきことをポジティブに、具体的に伝えてください。
避けたい表現 | 推奨する表現 | 理由 |
---|---|---|
「走らないで!」 | 「歩こうね」 | 具体的な行動が分かりやすい |
「こぼさないで!」 | 「こうやって持つとこぼれないよ」 | 正しい方法を教える |
「片付けなさい」 | 「お片付けゲームしようか」 | 楽しい活動として提示 |
3. 過程を認める声かけ(3歳頃から)
結果だけでなく、努力や取り組む姿勢を認めることで、子どもの内発的動機を育みます。
効果的な声かけの例:
- 「上手にかけたね!」→「がんばって描いたんだね~!すごく上手だよ」
- 「できたね!」→「最後まであきらめずに取り組んだね。すごいよ!」
4. 自己決定を促す声かけ
保育の目的は、「子どもが自立し、その子の人生の主人公となって生きるための援助」です。命令ではなく、子どもが自分で考えて行動できるような問いかけを心がけましょう。
- 「ご飯だからもう片づけて」→「そろそろご飯だけど、どうする?」
- 「早く着替えて」→「お着替えする?それとももう少し遊ぶ?」
5. 感謝の気持ちを伝える
お手伝いをしてくれたときや、優しい行動をしてくれたときなどは、必ず「ありがとう」を伝えるようにしましょう。親の助けになれたことは、子どもにとって非常にうれしい出来事です。
年齢別・効果的な声かけのポイント
0〜1歳:応答的なやりとりの基礎づくり
この時期は言葉よりも、応答的な関わりが重要です。
効果的なアプローチ:
- 子どもの発する音に応答する
- 「あー」「うー」という声に「そうだね」と返す
- 笑顔での「いないいないばあ」
- 日常の行動を実況中継(「おむつを替えようね」「ミルクを飲もうか」)
2〜3歳:自我の芽生えに対応した声かけ
この時期は自我が芽生え、「いや」「だめ」が多くなります。感情を受け止めながら、適切な行動を促すことが重要です。
実践的な声かけ例:
場面 | 子どもの状況 | 効果的な声かけ |
---|---|---|
食事 | 野菜を嫌がる | 「野菜を食べると強くなれるよ。一口だけ食べてみる?」 |
着替え | 着替えを嫌がる | 「○○ちゃんが好きな色のお洋服だね。着てみようか?」 |
外出準備 | 靴を履きたがらない | 「お外で楽しいことが待ってるよ。靴を履いて一緒に見に行こう」 |
4〜5歳:論理的思考を育む声かけ
この時期は「なぜ?」「どうして?」が増える時期です。論理的な説明と、子どもの好奇心を刺激する声かけが効果的です。
知育効果を高める質問例:
- 「どうしてそう思ったの?」
- 「他にはどんな方法があるかな?」
- 「○○だったらどうする?」
- 「今度は違うやり方でやってみる?」
【編集部体験談】実際に効果があった声かけ実例
Aさん(3歳児の母)の体験談
「息子が片付けを嫌がって困っていました。『片付けなさい!』と言っても全く効果がなかったのですが、『お片付けレースしようか!誰が一番早くできるかな?』と言い方を変えると、喜んで片付けるようになりました。今では『ママ、お片付けレースしよう!』と息子の方から言ってくれます。」
Bさん(4歳児の父)の体験談
「娘が算数的な概念に興味を持つきっかけは、日常の声かけでした。『リンゴが3個あるね。1個食べたら何個になるかな?』『今日は雲が5個見えるね。数えてみよう』など、生活の中で自然に数に触れさせていたら、数字が大好きになりました。」
避けるべき声かけ パターン
命令口調・否定的な表現
命令口調は避けましょう。子どもは怒られていると感じ、恐怖感から従うだけになってしまうからです。
避けるべき表現一覧:
- 「○○しなさい」「○○してはダメ」
- 「なんで○○なの!」「どうして○○できないの!」
- 「あなたのせいで」「本当に悪い子ね」
- 他の子と比較する言葉
- 外見や性別で制限する言葉
子どもを脅したり、怖がらせる表現
「早く寝ないとお化けが出るよ」「悪い子は追い出しちゃうよ」といった表現は、子どもは怖いから従うだけで、心や思考を育まないからです。
知育効果を高める環境づくり
物理的環境の整備
興味に沿った多様なものがある環境なら、子どもはそれを手に取って遊べます。声かけの効果を最大化するには、子どもが自発的に学べる環境づくりが重要です。
推奨する環境要素:
- 年齢に適した本や教材
- 手に取りやすい場所にある知育玩具
- 子どもの作品を飾るスペース
- 静かに集中できるコーナー
時間的環境の配慮
子どもが個々に好きな遊びができる、子ども主体の保育であれば、必要に応じて保育者はひとり(もしくは数名)のそばに行くことができます。
家庭でも同様に、子どもの興味や集中に合わせた時間の使い方を心がけましょう。
専門機関による声かけ指導の活用
幼児教室での専門的な学び
家庭での声かけに不安がある場合は、専門の幼児教室での学びも効果的です。専門の指導者から、子どもの発達段階に応じた適切な声かけ方法を学ぶことができます。
地域の子育て支援センターの活用
多くの自治体では、子育て支援センターで育児相談や講座を実施しています。専門家からのアドバイスを受けながら、効果的な声かけの方法を学ぶことができます。
声かけの効果を測る指標
短期的な変化
- 子どもの笑顔が増える
- 自発的な行動が見られる
- 親子のコミュニケーションが活発になる
- 子どもからの質問が増える
長期的な効果
- 自己肯定感の向上
- 学習意欲の向上
- 問題解決能力の発達
- 創造性の伸長
【まとめ】継続的な声かけで子どもの可能性を最大化
親の声かけは、子どもの知育効果を左右する重要な要素です。毎日の何気ない言葉がけを少し意識するだけで、子どもの学習能力や自己肯定感を大きく向上させることができます。
今日からできる3つのステップ:
- ポジティブな表現を心がける:「~しないで」ではなく「~しようね」
- 目を見て話す:スマホや家事の手を止めて、子どもと向き合う
- 過程を認める:結果だけでなく、頑張る姿勢を褒める
継続的な取り組みにより、親子双方が成長できる豊かな時間を作ってください。子どもの可能性は無限大です。適切な声かけにより、その可能性を最大限に引き出してあげましょう。
参考文献・出典
- 厚生労働省:政策レポート(発達障害の理解のために)
- 文部科学省:子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題
- 『3000万語の格差ー赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』ダナ・サスキンド著
- 保育所保育指針・幼稚園教育